研究課題/領域番号 |
21K04020
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
横倉 勇希 長岡技術科学大学, 工学研究科, 准教授 (70622364)
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研究分担者 |
大石 潔 長岡技術科学大学, 工学研究科, 教授 (40185187)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | モーションコントロール / モータドライブ / パワーエレクトロニクス / 加速度制御 / 力制御 |
研究実績の概要 |
人間の生活領域において、物理的な接触をともなう様々な作業を代替できる汎用性のある多関節ロボットはこれまでのところ未だに実現できておらず、その大きな原因としては従来の産業用ロボットの「力制御帯域の低さ」がある。物体との接触力を制御する必要がある生活領域においては、現在のところ手先位置を制御することのみに特化した産業用ロボットをそのまま汎用ロボットとしては使用することができないという実情がある。本研究では、「力制御帯域」を目的達成のための最重要な指標としており、その「力制御帯域」とは力制御系の制御性能を示すもので、ロボットに加わる外力をどの周波数まで制御可能かを表している。従来の産業用ロボットで力制御系を構築しても、その力制御帯域は著しく低くなってしまう。その要因として加速度次元の共振振動、永久磁石同期モータの遅い電流制御、遅いねじれトルク制御の3つが考えられている。そこで本研究では、それら3つの問題の解決を目的とし、位置制御と力制御との双方が広帯域に亘り可能な「負荷側加速度制御」を実現させることで、従来の産業用ロボットを生活領域汎用ロボットへと変生させることを目指している。 当該年度においては、負荷側加速度制御の内部のフィードバック制御ループである「ねじれトルク制御」の高速化を実現する手法を新たに考案し、その結果として負荷側加速度制御の広帯域化、そしてロボットの力制御帯域のさらなる広帯域化が可能となることを見出すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
負荷側加速度制御系の内部に存在するねじれトルク制御系の制御帯域を広帯域化することで、その外側の負荷側加速度制御系および力制御系の制御帯域を引き上げることが可能となる。そこで当該年度では、本研究の主目的である力制御帯域の広帯域化のために、ねじれトルク制御系の究極の広帯域化手法である「直接ねじれトルク制御(Direct Torsion Torque Control, DTTC)」を考案した。DTTCはこれまでの制御手法と全く異なり、ねじれトルクセンサの検出値からインバータの適切な電圧ベクトルを直接的に導き出し、永久磁石同期モータに電圧を印加する手法である。本手法により2慣性共振系に起因する機械共振振動を抑制しつつ高速なねじれトルク応答を可能としており、理論解析と数値計算により有用性が確かめられた。また、本研究成果の初期の検討事項について国際会議にて発表を行った。ただし、新型コロナウィルス感染症および近年の国際情勢に起因して、長納期であったり、そもそも入手が困難な電子・電気回路部品や半導体部品が多々あるため、ハードウェア開発が計画当初よりは難しくなっている側面もある。 以上のことから、現在までの進捗状況はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後においては、開発した高速電流制御サーボアンプ・低レイテンシねじれトルクセンサ・広帯域ねじれトルク制御系の3つの要素技術を組み合わせて広い制御帯域を持つ「負荷側加速度制御」の実現に迫る。ただし、高速電流制御サーボアンプ・低レイテンシねじれトルクセンサ・広帯域ねじれトルク制御系のいずれも、それぞれ改善の余地が残されているため、引き続き性能向上を行っていく。高速電流制御サーボアンプについてはさらなる電流追従時間の短縮化を実施、低レイテンシねじれトルクセンサについては機械的耐性の向上を実施する。広帯域ねじれトルク制御系についても、非積分型の新たな制御構造を用いることで、収束時間のさらなる短縮化が可能であることが予備実験により示されており、負荷側加速度制御への適用を目指す。また、本研究で得られた知見と成果は国際会議および国内学会において発表する予定である。
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