研究課題/領域番号 |
21K04023
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
水野 幸男 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50190658)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 電気火災 / トラッキング / 半断線 / ねじの緩み / 伝導ノイズ / 周波数スペクトル / 磁界 |
研究実績の概要 |
電気火災件数は年々増加しており、火災防止手法の確立が社会的に強く要望されている。火災の主要原因である差込みプラグのトラッキング(絶縁体表面の炭化)、電源コードの半断線(導体素線の一部断線)による短絡、導体接続部の緩みに起因する過熱の3つの現象を対象として火災予兆検出手法を確立し、火災防止監視システム実現への道筋をつけることに本研究の意義がある。今年度は、これら3つの現象を実験室で再現し、火災予兆検出の可能性のある特徴量を抽出した。 差込みプラグのトラッキング火災発生に至る過程は、漏れ電流とその周波数スペクトル、表面の絶縁抵抗、上昇温度の測定結果および炭化の観測結果に基づいて4つの段階に分けられることを示した。火災防止のためには第2あるいは第3の段階で検出することが望ましいが、健全状態からの特徴量の変化が小さいため、さらに検討が必要である。漏れ電流の周波数スペクトルに基づく特徴量の変化が大きくなる第4段階では、検出は容易であるが発火直前になる。2つの段階での検出の併用により信頼性を向上させる必要がある。 電源コードの半断線に起因する短絡は、電流・電圧波形により検出できることを示した。しかしながら短絡発生後の検出になるため、発火に至る可能性もある。火災防止の観点からは発火前の検出、すなわち電源コードが半断線状態にあることの検出が望ましい。伝導ノイズの解析を行った結果、半断線電源コードでは数MHzの成分に健全電源コードとは異なる特徴があることがわかった。 ブレーカの導体接続部にねじの緩みがあり、さらに緩み部に生じる微小空間で放電が発生すると過熱して可燃物に着火する現象を実験室で再現した。本研究計画時には思い付かなかった磁界による検出に挑戦した。ねじの緩みが大きく放電が発生する場合には、ねじの横で測定する磁界の値は大きくなり、測定値のばらつきが大きいことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
差込みプラグのトラッキング(絶縁体表面の炭化)、電源コードの半断線(導体素線の一部断線)による短絡、導体接続部の緩みに起因する過熱の3つ現象を実験室で再現し、火災防止の観点からそれぞれの現象を検出できる可能性のある特徴量を抽出できたため。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に抽出した特徴量の有効性を、種々の条件下で確認する。その結果を踏まえ、必要があれば特徴量を再検討する。 並行して、ひとつの特徴量で3つの現象を検出・区別する手法の検討を進める。現時点では、3つの現象を検出するための特徴量は現象ごとに異なる。検出システム実用化の観点からは、同一特徴量で3つの現象を検出できれば望ましい。電源コードの半断線状態を検出できる伝導ノイズに着目し、差込みプラグのトラッキングや導体接続部の緩みに起因する過熱の検出の特徴量として使用できるかどうかを検討する。 それぞれの現象が生じた状態と健全状態との特徴量の差は小さいこと、また、3つの現象同士の特徴量の差も小さいことが予測されるため、機械学習を用いた異常検出や現象識別を試みる。
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