年々増加する電気機器火災の3大原因とされる差込みプラグのトラッキング(絶縁体表面の炭化)、電源コードの半断線(導体素線の一部断線)による短絡、導体接続部の過熱(ねじの緩み)を対象として火災予兆検出手法を確立し、常時遠隔監視システム実現への道筋をつけることに本研究の意義がある。今年度は種々の家庭電気製品を負荷として、昨年度に着目した伝導ノイズを9kHz~10MHzの領域で解析することにより火災予兆検出手法を検討した。 プラグをコンセントに差込み、電解液を滴下してトラッキングを発生・進展させる過程において、放電が発生すると数秒間にわたり伝導ノイズレベルが上昇した。その最大値の時間変化量と継続時間に基づく判定条件により、約90%の正解率でトラッキングを検出できることを示した。 100V電源コードの絶縁被覆を約1mm幅で除去し、導体素線30本のうち26本を切断した半断線試料に通電45分と無通電15分のサイクルを短絡発生まで繰り返した。短絡発生の数サイクル前の段階で、伝導ノイズレベルが上昇することを確認した。半断線箇所での導体接触や放電が原因と推定される。この変化により、電源コードが半断線状態であることを短絡・火災発生前に検出できると考えられる。 ブレーカ端子の導体接続部のねじを緩めると、微小空間が形成される。ねじを緩めただけでは伝導ノイズは正常時と変わらないが、微小空間で放電が発生すると伝導ノイズレベルが上昇することから、放電の発生ひいてはねじの緩みを検出できることを示した。 これらの現象は、負荷によらず観測されることを確認した。伝導ノイズレベルの上昇程度やレベル上昇が生じる周波数は対象とする現象や放電の状態により変わるが、9kHz~10MHz領域の伝導ノイズを現場で測定して集中管理所へ無線通信し、解析を行うことで火災発生予兆を常時遠隔監視するシステムを構築できる可能性を示した。
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