研究課題/領域番号 |
21K04026
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
甲斐 祐一郎 鹿児島大学, 理工学域工学系, 准教授 (50595436)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 電気機器 / 磁気特性 / 透磁率テンソル / 電磁界解析 |
研究実績の概要 |
電気機器用鉄心材料は,交番及び回転磁束下で磁化されるとともに,励磁する方向で磁化のしやすさが異なる磁気異方性を有しており,これらの磁気現象を考慮した電気機器設計を行うことが必要である。一般に,透磁率テンソルは磁束密度ベクトルと磁界強度ベクトルを関係づける物理量であり,磁気異方性を表すことができる。従来の電磁界解析手法では,透磁率テンソルの非対角項をゼロとしており,鉄心材料の磁気異方性を正確に考慮した電磁界解析を行うためには,すべての透磁率テンソルの値を測定し,その挙動を明らかにすることが重要である。研究代表者は,これまでの研究によって,数学的なテンソルの座標変換の関係式と四方向の透磁率を測定することで透磁率テンソルを求めることができる理論を見出した。本研究課題では,鉄心材料の透磁率テンソルの解明及びモデル化し,さらに透磁率テンソルを考慮した電気機器の電磁界解析技術の開発に取り組む。これまでに透磁率テンソルの測定法およびその結果に関する研究報告例はなく,基礎から検討を行う必要があるため,測定装置の開発から透磁率テンソルのモデル化及び電磁界解析手法の開発を3年間の期間で行う。 今年度は,鉄心材料の透磁率テンソル測定システムを開発するため,まず,四方向励磁による励磁器を設計するため,電磁界解析によって巻線配置や励磁ヨークの寸法を検討した。次に,四方向の磁界強度を測定するセンサ及び校正を作製し,センサコイルの校正を行った。さらに,磁気特性測定のために,励磁器,多チャンネルのA/D, D/Aコンバータ及び多チャンネル分のプリアンプを組み合わせることで磁気特性測定システムを開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初,励磁器を設計し作製する予定であったが,励磁器構造の磁界解析を行ったところ,既存の励磁器に励磁巻線を巻き直すことで対応することができた。また,四方向の磁束密度と磁界強度を測定するセンサとして,4つのHコイルが巻ける巻枠を設計し,センサを作製した。また,磁束密度と磁界強度測定において,各出力信号が微少であるため,4方向の磁束密度測定と4方向の磁界強度を測定するためにプリアンプを計8台作製し,プリアンプの振幅と位相特性を明らかにした。さらに,4方向から励磁波形を出力し,8つの出力電圧をパソコンに取り込み磁束密度波形の制御を行うため,4チャンネルのD/Aコンバータ,8チャンネルのA/Dコンバータを購入し,パソコンを用いてディジタルフィードバック制御を行うシステムを開発した。以上のことから,今年度は,当初の研究計画通りに進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は,今年度開発したシステムを用いて,鉄心材料の透磁率テンソル評価と工学モデルの開発を行う。まず,モータ鉄心材料は交番及び回転磁束下における透磁率テンソルの挙動を明らかにする。この際,測定データの再現性の確認や分析を進めながら,前年度作製した測定システムの問題点が見つかった場合は,それをフィードバックし改善に取り組む。次に,鉄心材料の透磁率テンソルを評価し,鉄損や透磁率テンソルの固有値などの関係を明らかにする。さらに,透磁率テンソルを用いて磁界強度ベクトルを推定するための理論を構築し,その妥当性を検証する。
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