研究課題/領域番号 |
21K04031
|
研究機関 | 金沢工業大学 |
研究代表者 |
河野 昭彦 金沢工業大学, 工学部, 准教授 (40597689)
|
研究分担者 |
藤田 洋司 金沢工業大学, 工学部, 教授 (40720222)
漆畑 広明 金沢工業大学, 電気・光・エネルギー応用研究センター, 教授 (40723367)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | リチウムイオン電池 / モデル化 / 充放電シミュレーション |
研究実績の概要 |
本研究では,高性能2次電池であるリチウムイオン電池(Lithium-Ion Battery: LIB)を効率的かつ安全に使用するため,“電池と負荷(モータ等)を繋ぐインターフェース”としての“LIB制御理論”の高度化を目指している。LIB制御のためには実際の電池の特性を精度よく再現できる電池モデルが不可欠である考え,電気回路理論と電気化学反応速度論を融合した新概念に基づくLIBモデルを開発に取り組んでいる。 本年度は,市販の円筒18650型LIBに関して,充放電特性と電池温度の測定に加え,電気二重層容量や開回路電圧曲線等のモデルパラメータ,発熱特性をモデル化するための電池熱容量,放熱係数,エントロピー変化に伴う吸発熱量等の解析を実施した。また,これらの解析結果をベースに,電気回路理論と電気化学反応速度論を融合したLIBモデルの核となる支配方程式と計算アルゴリズムの検討を行った。ここでは,LIB内部を模擬した集中定数型等価回路(電池内均一反応を仮定)を回路シミュレータ上で計算し,電気工学的に解析された電流を電池内でのイオンの流れ(物質移動),電圧を物質移動や電子移動反応の電気化学的駆動力である過電圧と見て,液相,固相拡散方程式(物質移動),バトラー・フォルマー式(電子移動)等を解く技術を開発した。更にこれらの数値解を電気工学的な抵抗素子に変換する手法を開発して上記の等価回路と連成させる独自のアルゴリズムを構築した。また,回路素子での消費電力から電池温度を計算する手法を確立し,上記の計算技術と組み合わせて電気・熱連成計算アルゴリズムを構築した。 以上のモデルにシミュレーションに適用し,2C以下の小電流充放電時の電池電圧,電池温度が精度よく解析出来ることを確認した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず,市販LIBの種々の特性測定を通じて,実際の電池の評価技術を強化することが出来た。また,電池内均一反応を仮定した場合において,電気回路理論と電気化学反応速度論を融合した新概念に基づくLIBモデルを当初予定に従って開発することが出来た。さらに,開発したアルゴリズムにより,実際の電池における小電流充放電特性が精度よく解析出来ることを確認し,構想の妥当性を検証することが出来た。以上の点から,本研究は概ね順調に進んでいると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は,これまでの研究成果をベースに,電池内反応分布の加味したLIBモデルを開発へと進む。アルゴリズムの基本概念は踏襲するが,回路の基本骨格を均一反応系の集中定数型から反応分布が表現可能な集中定数系へと発展させる。また,測定技術に関しては,反応分布を詳細に解析するには,正極の応答と負極の応答が混在して測定される2極セルでは不可能と考えている。したがって,単極の測定が可能な,作用極(評価電極),電位測定の基準となる参照極,作用極に電流を流すための対極からなる3極セルを使用する必要があり,既にこの測定方式の検討を開始している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究が順調に進んだため,当初計画していた消耗品費が抑えられた。コロナ禍に伴い学会がオンライン開催となったため,計上していた旅費が抑えられた。 一方,次年度は市販品電池では対応できず電池を自作(3極セル)する必要があるため,試行錯誤に伴い消耗品費が増加する可能性があるとともに,評価環境の整備が必要になる可能性がある。したがって,差額分は物品費として使用する予定である。
|