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2021 年度 実施状況報告書

バイオ由来生分解性電気絶縁油の実装に及ぼす溶存水の影響

研究課題

研究課題/領域番号 21K04033
研究機関金沢工業大学

研究代表者

宮城 克徳  金沢工業大学, 工学部, 教授 (60716190)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード生分解性電気絶縁油 / 油中溶存水 / 雷インパルス / 放電進展 / 針-平板電極
研究実績の概要

一般に,油入電気機器(変圧器やOFケーブルなど)内部の絶縁は絶縁油と絶縁紙を組み合わせた複合絶縁系で構成されており,複合絶縁系内において水分の多くは絶縁紙中に存在している。例えば過負荷運転のような急激な加熱によって系内の水分平衡関係がアンバランスになると,多量の紙中水分が油中側へ移行して油中水分量が増加する。場合によっては,紙中水分が気化して油中に気泡が発生し,絶縁不良による電力供給停止等の事故も懸念される。特に植物由来の天然エステル(生分解性電気絶縁油の代表)は飽和水分溶解度が極めて高く,鉱油の10倍以上の水分量が溶存することになる。
2021年度は4種類の植物由来の生分解性電気絶縁油を入手(①NYTRO BIO 300X(@Nynas社),②FR3(@Cargill社),③PFAE(@ライオン),④MIDEL 7131(@M&I MATERIALS社))するとともに,油中溶存水分量を調整する装置を作製した。その中で,(ⅰ)鉱油と飽和水分量が類似しているNYTRO BIO 300X,および(ⅱ)鉱油と動粘度が類似しているPFAEの関係性を把握する目的で,不平等電界における溶存水分量の影響について,インパルス放電進展の観測により鉱油と比較・調査した。その結果,
(1) NYTRO BIO 300X中のストリーマは印加電圧の上昇とともに,直線的に進展するのに比し,鉱油中のストリーマはステップ的に進展すること,
(2) PFAEと鉱油の水分活性値(水分溶解量/飽和水分量)を同等にすると,放電進展長さはほぼ同じになること,
等を明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

(1) 油中溶存水分量を調整可能な装置は当初計画通りに完成することができた。また,研究対象の供試絶縁油も計画通り入手でき,雷インパルス電圧による実験データを取得することができた。
(2) 一方,購入手配した電気絶縁油破壊電圧試験装置(交流)は当初,夏期(8/E)を目安に入手予定であったが,実際には半年遅れの冬期(1/中)に納入され,当初の研究計画を若干見直しせざるを得ない状況となった。

今後の研究の推進方策

(1) 絶縁油中溶存水の増加要因の調査
生分解性電気絶縁油の中で,代表的なエステル油は一般的に飽和水分量が多い特徴を有している。また,エステル油の電気機器への実装を考慮すると,その適用として複合絶縁系(主に絶縁油と絶縁紙)で構成されることが一般的である。複合絶縁系内において,電気機器運転中における油中溶存水の増加要因,および油中水分溶解量を調査・解析する。
(2) 平等電界(球-球電極)における絶縁破壊電圧の調査
絶縁油中溶存水の交流絶縁破壊電圧特性(平均値)は,水分活性値(水分溶解量/飽和水分量)によって整理されることが知られている。一方,油中水分溶解量が絶縁破壊電圧に及ぼす影響度はワイブル確率などの統計処理によって評価する必要があるため,油中水分溶解量ごとの試行データサンプル数を計画して調査・遂行する。
(3) 不平等電界(針-平板電極)における放電進展特性の調査
電気機器内部で放電が生じると,機器損壊に至る絶縁破壊へ進展することがある。放電を発生した後,その放電の進展メカニズムを調査することは,機器の絶縁設計する上で重要な要素となる。油中水分溶解量がストリーマ放電進展に及ぼす影響について,急峻なインパルス電圧により調査・観測する。

次年度使用額が生じた理由

当初,併用利用を計画していた絶縁油中水分測定用センサー購入の費用に充填し,遅延が発生した交流による電気絶縁油の破壊電圧試験データを効率的に取得する。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2021

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] 炭化水素系電気絶縁油中不平等電界における放電進展過程の比較2021

    • 著者名/発表者名
      中村勝海
    • 学会等名
      令和3年電気学会基礎・材料・共通部門大会

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公開日: 2022-12-28  

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