研究課題/領域番号 |
21K04034
|
研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
長谷川 勝 中部大学, 工学部, 教授 (70340198)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 永久磁石同期電動機 / ベクトル制御 / トルク応答 / ユニバーサル化 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,車載向け主駆動モータほかへの適用を想定した永久磁石同期モータ(以下,PMSM)の制御応答を指定する高速トルク制御法の開発とその他モータへの水平展開を図ることであり,初年度はその基本技術の確立と評価を実施した。 一般に,PMSM の高速トルク制御法として電流ベクトル制御が広く用いられるが,これは独立した二軸電流制御を基盤としてトルク制御を実現している。したがって,モータ駆動用インバータ制限に伴う操作量飽和が生じると所期の制御性能を発揮できなくなり,無用な電流応答,ひいては無用なトルク応答を引き起こす。これに対し,本研究では出力トルクの瞬時応答を管理する制御方式を開発した。これにより,インバータ制限に伴う操作量飽和が生じても当該システムで達成可能範囲内における最大のトルク応答を保証し,かつインバータの過変調運転,1パルス運転を利用しながらも過渡的振動のような無用なトルク応答を引き起こさないトルク制御を実現した。 さらには,操作量飽和を起こさない領域においても本手法を適用できるように制御アルゴリズムを拡張し,従来の電流ベクトル制御における最大トルク/電流制御相当,弱め界磁制御相当の手法を確立し,電流ベクトル制御へ切り替えることなく全運転領域を単一アルゴリズムでカバーすることを可能とした。 上記については全て実機実験による検証が完了しており,所定のトルク応答性能と単一アルゴリズムによる全領域運転が可能であることを確認している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
上記の通り,本研究の基本技術となる永久磁石同期モータに対する高速トルク応答制御については既にアルゴリズム完成の域にあり,実機実験により所期の性能を達成している。本研究課題は基本技術の他電動機への適用,すなわち制御技術のユニバーサル化も目的の1つであり,この点についても検討が進めている。現段階では未公表であるが,永久磁石同期モータ以外で回転磁界を動作原理とするモータ,回転磁界を動作原理としないモータ,ならびに複数の回転磁界でモデル化されるモータに対しても所期の性能を発揮させ得ることを確認している。
|
今後の研究の推進方策 |
初年度に開発した本手法の適用範囲拡大を図るため,次の観点で展開する。 ①位置センサレス制御,②磁気飽和特性の強い同期モータに対する評価,③同期モータ以外のモータに対する制御アルゴリズムの拡張と評価,④複数の回転磁界でモデル化されるモータに対する制御アルゴリズムの拡張と評価 本研究は順調に進んでおり,制御アルゴリズムの拡張は概ね完了している。したがって,次年度以降は実機実験による各種評価が中心となる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス対策のため,学会等が未だオンライン実施されているケースが多く,学会参加のための旅費が不要になったことや,世界的な半導体不足の影響を受けて入手予定であったものが入手困難な状況になったことが理由である。次年度以降は実機実験による性能評価が主となるため,必要な機材を早めに手配して研究費の適切な執行に努める。
|