本研究の最終目標は、コロナ放電によって液中に供給された活性酸素種の化学反応過程の解明である。これを明らかにすることで、本手法によるOHラジカルの高速・高効率利用が可能となる。 本年度は、以下の実験を行った。 (1) 液体ポンプを用いて液相の流れを作り出し、その液面にコロナ放電を照射して酢酸の分解実験を行った。その結果、液体ポンプ流量が低い方が酢酸をより多く分解できることが明らかとなった。酢酸の分解に寄与するオゾンと過酸化水素の濃度も測定したところ、ポンプ流量が低い方がそれぞれの濃度が低くなることがわかった。コロナ放電によって供給されるオゾンや過酸化水素の化学種の量は液体ポンプ流量には関係がないことから、溶液の循環、すなわち主な反応領域である液面の循環が酢酸分解に影響を及ぼしている可能性がある。一方で、この結果は、前年度に得られた液相化学種(オゾン、過酸化水素、酢酸、O3-等)の2次元化学反応シミュレーションの結果とは矛盾することがわかった。 (2) 前年度行った正・負両極性でのコロナ放電処理の比較をより詳細に行った。酢酸溶液のpHを中性にするために、次の2つの方法で調整した。一つは水酸化ナトリウムを添加したものであり、もう一つはりん酸緩衝液を用いたものである。結果として、水酸化ナトリウムを添加した酢酸溶液の場合、負極性の方がより多く酢酸を分解できることがわかった。しかしながら、りん酸緩衝液を用いて中性に調整した酢酸溶液を処理した場合、極性差が無くなることが明らかになった。以上のことから、放電極性を変えることで液相での化学反応に違いが現れるが、pHをコントロールすることで差が無くなることがわかった。
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