研究課題/領域番号 |
21K04041
|
研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
菊間 信良 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40195219)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | MIMOレーダ / ターゲット方向推定 / MUSIC法 / 分散アレー / 圧縮センシング / FFT-FOCUSS / 中央値アルゴリズム / ビン間隔変更アルゴリズム |
研究実績の概要 |
本研究では,移動通信システム,無線LAN,レーダなどで幅広く使われているMIMO (Multiple-Input Multiple-Output) 技術を使って,高精度に端末や目標物の位置推定を行うことを目標としてきた.特にMIMOレーダを用いたターゲット推定は自動運転にも資する技術であるので期待されている.2023年度(令和5年度)の具体的な成果を以下に述べる. (1)複数アレーを分散配置することで全体の開口長を大きくした分散アレーアンテナに着目し,近傍波源位置推定精度の向上に取り組んだ.また,推定手法には高分解能特性を有するMUSIC法を適用した.しかし,MUSIC法は角度と距離の2次元パラメータのピークサーチを行うため,計算負荷が非常に大きいという問題がある.そこで,まず波源位置の初期値を算出し,その初期値周辺においてMUSIC法を反復して適用することで,高精度で高効率な近傍波源位置推定を実現することを目指した.計算機シミュレーションによる検討の結果,分散アレーを導入することで距離推定精度を向上させることができ,MUSIC法を反復して適用するアルゴリズムを用いることで,従来法と比べて短時間で高精度な近傍波源位置推定を実現できることが示された. (2)室内のマルチパス環境下で,電波源方向を推定する技術について検討を行った.本検討では,マルチパス環境下での方向推定に強い圧縮センシングと呼ばれる信号処理技術に着目し,その中でも収束の速いFFT-FOCUSSアルゴリズムを用いた.方向推定精度を向上させ,推定性能を安定させるために,本研究において中央値アルゴリズムとビン間隔変更アルゴリズムを提案し,これらの2手法を用いることによって推定精度が大きく向上することが示された.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は,分散アレーとMUSIC法を用いて効率良く高精度な電波源位置推定が行えることを示し,室内のマルチパス環境下においては圧縮センシングのひとつであるFFT-FOCUSSを適用し,2つの提案アルゴリズムにより電波源方向推定が高精度かつ安定的に行えることを示した.以上のように本年度は,MUSIC法や圧縮センシングを積極的に導入・改良し,電波源推定性能の改善を図った.得られた成果から,3年目としてはおおむね順調に進展していると言えるが,実験装置の故障やシミュレータの不具合などがあって,総合評価が十分にできていない状況にある.
|
今後の研究の推進方策 |
(1) 推定アルゴリズムの高性能化:MIMOレーダ用推定アルゴリズムとして圧縮センシングを用い,その基本特性を明確にしてきた.今後は圧縮センシングを改良し,更なる性能向上を図る.特に実装を視野に入れた場合,アレー素子間の相互結合,ケーブル,受信機等に存在する利得,位相誤差等のアレー誤差の影響を受けて性能が劣化することが予想される.このアレー誤差に対する耐性をもつアルゴリズムについて検討する. (2) MIMOレーダの受信アレーの仮想多次元化:MIMOレーダの送信側で,空間領域,周波数領域,角度領域,符号領域などにおいて仮想アレーの多次元化を行う.次年度は,圧縮センシングにビームスペース方式の導入したアルゴリズムの解析を行い,有用性を探る.これにより,角度領域の処理を加えることになり,処理の効率化や性能改善が期待できる. (3) 電磁界シミュレータおよび実機を用いたMIMOレーダの総合評価:電磁界シミュレータおよび実機を用いたターゲットの方向推定を行う.本研究で提案した推定アルゴリズムの有効性を総合的に評価することが目的で,新たな課題が発生した場合は,アルゴリズムの改良へとフィードバックさせる.
|
次年度使用額が生じた理由 |
2023年度もシミュレーションに重点を置いたため実験データ解析用のコンピュータは次年度購入することとした.また実験および測定に必要な電子部品等も次年度購入となる.さらに,2024年度は最終年度となるため成果発表も積極的に行っていく予定である.
|