アンテナを近傍に配置した場合,アンテナ間の相互結合が増大し,アンテナ特性は劣化する.従来の相互結合低減技術では,結合の低減は可能であるが,アンテナの放射パターンは変化してしまう.本研究では,到来する電波を迂回させるクローキング構造の一種であるマントルクロークに着目し,アンテナ近傍に他のアンテナが近接配置されたときの相互結合の低減と,アンテナ特性の維持を同時に達成することを目的とする. 令和3年度は,アンテナの動作周波数の高域側の不要な電波をクローキングするために,ストリップ導体を用いた円筒形状のマントルクロークアンテナの設計法を確立した.次に,アンテナの動作周波数の低域側に阻止帯域が現れる円筒形状のマントルクロークを考案し,アンテナを近接に配置したときの相互結合およびアンテナ特性を電磁界シミュレーションにより確認した. 令和4年度は,動作周波数の低域側に阻止帯域を有するマントルクロークアンテナの実証のために,アンテナ断面を矩形形状とした際のマントルクロークの実構造として,アンテナの四隅にストリップ導体を配置する構成を考案し,動作周波数におけるアンテナ特性の維持と低周波側における相互結合の抑制を同時に達成可能であることを示した. 令和5年度は,クローキングの発生条件を体系的にまとめることで,マントルクロークアンテナの動作原理を明らかにした.阻止帯域は,誘電体表面に配置されたストリップ導体の並列共振によって得られることがわかった.また,マントルクロークアンテナに平面波を入射したときの散乱抑制と相互結合抑制の関係を明らかにした.ストリップ導体の配置位置を変更した構成を用いることで,動作周波数の低域側の相互結合を低減するとともに,動作周波数では放射パターンを維持できることを実証した.
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