研究課題/領域番号 |
21K04057
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
小澤 佑介 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 講師 (20634215)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 海中ワイヤレス給電通信 / 可視光通信 / SLIPT / 多元接続技術 / 空間分割技術 / 光符号分割多元接続技術 (OCDMA) / 直交周波数分割多元接続 (OFDMA) / 適応変調技術 |
研究実績の概要 |
本研究では、海底国際資源の探索・発掘作業を円滑に進めるために、複数の海中ドローンやセンサーに対して、可視光を用いたワイヤレス通信・ワイヤレス給電を同時に実現する多元接続型海中可視光ワイヤレス給電通信(多元接続型海中SLIPT)の基礎理論構築を目的としています。この目的達成のため、4つの課題に取り組みました:(A)空間分割技術を基盤とした多元接続型SLIPT技術の理論解析(R03年度課題)、(B)推定海中空間チャネル状態に応じた適応変調技術の理論解析(R03-R04年度課題)、(C)光波長適応変調技術を用いた多元接続型SLIPT技術の理論解析(R04年度課題)、(D)(A)から(C)の基礎実験評価系製作と通信・給電性能の基礎的実験評価(R05年度課題)です。
昨年度から進捗がやや遅れており、今年度は特に課題(A)と(B)に注力しました。課題(A)では、複数LED/PDを用いたダイバーシティ送受信機の最適化を行い、平均信号対雑音比(SNR)が最大となるようにLEDの半値角やフォトダイオード(PD)の視野角(FOV)を個別に最適化するアルゴリズムを提案し、従来の一様最適化と比べて平均SNRを向上させました。
課題(B)では、様々な波長帯に対する海中光伝搬特性の導出と、複数波長を用いた適応変調技術の解析、浅海太陽光雑音を考慮したSLIPT性能の解析を行いました。具体的には、モンテカルロ・シミュレーションを用いて青色、赤色の海中光伝搬特性を導出し、赤・青・緑の波長を用いたSLIPTシステムの性能解析を行いました。その結果、水質が良好な場合は青色・緑色の単色使用が、劣化した場合は緑色・赤色の2波長使用が最適であることが示されました。また、太陽光雑音が大きい昼間の浅海において、SLIPT受信機の最適化により通信品質を保ちつつ給電性能を向上できることが確認されました。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究では、R3年度・R4年度に目標としていた課題(A)と課題(B)の達成に想定より多くの時間を要したため課題(A)(B)の知見を必要とする課題(C)光波長適応変調技術を用いた多元接続型SLIPT技術の理論解析の検討が十分進んでいない。とくに当初予定より遅れた理由としては、様々な海中環境に応じたダイバーシティ送受信機及びSLIPTシステムの最適化に時間を要したためである。とくに、海中環境については新たに緑色以外の海中光伝搬特性について検討されておらず、新たにシミュレーションを通じて導出したため時間を要した。十分に考慮されておらず、その導出海中環境の様々な多元接続通信と融合設定した空間分割技術とOCDMA・OFDMAを用いた多元接続型海中SLIPT技術の提案とその性能評価を完了しました。具体的には、海中での通信性能と給電性能の両方を評価するためのシミュレーションモデルを構築し、初期の実験結果から高い電力効率と安定した通信性能を確認しました。また、海中クロロフィル濃度に基づいた適応変調技術の理論解析も進め、これにより海中状況に応じた最適な波長選択が可能であることを示しました。今後は、ここまでの知見を活かし、課題(C)に取り組む予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、今年度までの成果を基にさらなる課題(C)光波長適応変調技術を用いた多元接続型SLIPT技術の理論解析を進める。特に、海中環境の変動に対する光波長適応変調技術を用いた多元接続方式(光符号分割多元接続方式(OCDMA)、光直交周波数分割多元接続方式(OFDMA))について検討を進める。また、多元接続する複数の海中ドローンやセンサーの配置、及び所望海中通信ネットワークサイズについても検討を行い、その際の所望通信特性を満たす通信エリアカバー率等の導出を行う。 また、これまでの理論解析・評価の検証のために、複数の送受信機を制作を行い、複数端末接続時の通信・給電性能について実験的評価を行う予定である(課題(D))。ただし、本研究課題では基礎実験の段階であり、まずは地上での実施を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が主に生じた要因は論文誌掲載料である。これは研究成果のとりまとめが遅れたため、投稿を予定していた論文誌に間に合わなかったためである。 これらの研究成果はまとまり次第論文誌へ投稿する予定である。
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