2023年度は「被接触コネクタ領域で発生するPIMの影響」を終端法および無終端法におけるReverse-PIMに対して定量化し、それを低減するための原理検討を進めた。ここでは2022年度に提案した非接触コネクタ領域以外を部分的にニッケルメッキした基準試料と、非接触コネクタ領域にもニッケルメッキを施した試料等を用い、それらの差異低減化を図った。その結果、非接触コネクタで設置間隔が線路内波長の約4分の1に設定すると、非接触コネクタで発生するPIMが相殺され、かつ、試料から発生するPIMを最大化出来ることを明らかにした。 またニッケルメッキを片面にのみ施したストリップ線路を外注作成し、これを用いた被測定試料を研究室にて内製する。これを用いて、信号線導体の表面および裏面の状態差が平衡系無終端法に与える影響を評価した。これにより本研究課題の主題である「実運用時の電磁界分布を考慮した非接触PIM測定」の原理的効果測定が可能となった。 なお上記検討と平行して測定系全体の残留PIM低減に取り組み、測定系の高感度化を目指したノイズキャンセリング手法を検討した。検知したノイズ信号をキャンセル用外部信号により低減するもので、システムノイズ測定とサンプルPIM測定を電子スイッチで高速に切り替えることで、これらを実質的に同時観測できるようにした。 以上の結果も含めた3年間の研究を通して、平面伝送線路の実運用時の電磁界分布を考慮した非接触PIM測定法を考案し、シミュレーションと実験により、原理的な妥当性を評価した。実験においては高いPIMを発生するニッケルメッキ試料を用いて本提案手法の有効性を示した。
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