研究課題/領域番号 |
21K04059
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
藤井 雅文 富山大学, 学術研究部工学系, 准教授 (60361945)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 地球電磁気学 / 電磁波伝搬 / 地表面プラズモン / FDTD解析 / 深層学習 / 短期地震予測 |
研究実績の概要 |
本研究では、電磁気学、電磁波工学および電子物理化学を基礎とする新しい原理の短期地震予測法を確立することを目標とし、地震の前に地殻の岩盤に圧力が加わることにより内部から膨大な電荷が放出され地上に出現し地表面プラズモンとして振動、伝搬し上空の電波伝搬に影響を及ぼすことを検証してきた。実験観測において、その証拠となる偏波依存した地震前兆信号を検出することに成功した。複数の観測拠点をネットワークで結び、各地の観測データをリアルタイムで取得し解析できるシステムを作成した。本システムを用いて、複数の比較的大規模な地震の数時間前に異常な電波伝搬信号を検出した。特に、2022年3月16日の福島沖M7.4の地震等の直前に明瞭な電磁波異常を観測し、その異常信号が地震に関連する根拠を得た。これらの観測データの発生状況と同等の環境を構築するため、3次元デジタル国土地形データおよび超並列スーパーコンピュータを用いて有限差分時間領域法(FDTD法)による大規模数値シミュレーションを行い、山地、河川、海岸などの地形が地表面プラズマ波の伝搬に及ぼす影響を解析した。その結果、地表面に電荷が出現した状況では偏波に依存する電磁波の異常な回折が生じることを示すことに成功した。また、その異常回折波の特性を詳細に解析し、地形のランダムな形状により電磁波が多くの収束したビームを形成しランダムな方向へ散乱する様子を明らかにした。これにより、観測データを説明可能な物理的機構を明らかにし、この理論に基づき電磁波の観測を実施することにより地震の短期予測を可能にできることを示した。さらに、これまでの観測データをもとに、異常電波伝搬を予測する深層学習プログラムを作成し、今後の短期地震自動予測を実現するための検討を実施中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
まず、複数の観測拠点をネットワークで結び、各地の観測データをリアルタイムで取得し解析できるシステムを作成したことにより、本システムを用いて、2022年3月16日の福島沖M7.4の地震の直前に明瞭な電磁波異常を観測し、その異常信号が地震に関連する根拠を得たこと、次に、3次元デジタル国土地形データおよび超並列スーパーコンピュータを用いて有限差分時間領域法(FDTD法)による大規模数値シミュレーションを行い、山地、河川、海岸などの地形が地表面プラズマ波の伝搬に及ぼす影響を解析した結果、地表面に電荷が出現した状況では偏波に依存する電磁波の異常な回折が生じることを示すことに成功したこと、最後に、これまでの観測データをもとに、異常電波伝搬を予測する深層学習プログラムを作成し、今後の短期地震自動予測を実現するための準備が順調に進展していることが理由である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの観測データ、解析結果をまとめ発表することと、それにより地震に伴う電磁波異常の物理機構を明らかにし、今後の短期地震予測法の確立の基礎とする。さらに、深層学習を応用することにより効果的に地震予測を実現する手法を構築する。
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次年度使用額が生じた理由 |
これまでの研究結果をまとめた論文を現在投稿中であり、審査に時間がかかり今年度中に論文掲載料を支出しなかったため、これが次年度に持ち越すこととなった。論文はすでに投稿しており、次年度に掲載が決定し次第、掲載料を支出する。このことに伴い、学会参加、発表が次年度に繰り下がることとなり、これらを次年度に支出する計画である。
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