研究課題/領域番号 |
21K04060
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
笹森 文仁 信州大学, 学術研究院工学系, 教授 (70298090)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | OFDM / 繰り返し送信 / 広域化 / 低消費電力化 / 理論的解明 / 実験的検証 |
研究実績の概要 |
本研究では,伝送速度と伝送品質の双方の向上を目的とした繰り返し送信方法を新たに提案する.伝送特性は無線回線状態によって大きく変動することから,提案方式の優位性及びその波及効果を理論的に解明するために,繰り返し送信数及び無線回線状態をパラメータとした伝送特性の理論式を導出する.また,提案方式は無線エリアの広域化及びIoT機器の低消費電力化の観点で優位性があることを実験的に検証する. 初年度は,まずはじめに,提案方式における繰り返し送信数を各種変化させたときの,熱雑音環境下における伝送特性(電力利用効率の評価指標であるビット誤り率特性,誤り無くパケット送信が成功する確率であるパケット成功率特性,単位時間・単位周波数あたりに送受信できるデータ量であるスループット特性)をコンピュータシミュレーションにより取得した.その結果を用いて,提案した繰り返し送信方法により新たに追加した送信データのビット誤り率について解析し,従来の送信データも含めた総合的なビット誤り率の理論式を導出した. 次に,提案方式の優位性を実験的に検証するための実験プラットフォームを構築した.具体的には,伝送距離に対するスループット特性を取得するために,提案方式の変復調処理を実装したノートPCを送受信機として使用し,伝送路としてFM電波,超音波,及び音波を選択して実験ができるように構築した.また,特定実験試験局免許を取得したソフトウェア無線機を送受信機として使用し,428MHz帯での伝送実験ができるように構築した.さらに,処理能力が低いIoT機器での実験を視野に入れ,ESP32マイコンボードに提案方式の変調処理を実装し,送信機として活用できるようにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
提案方式の優位性及びその波及効果を理論的に解明するための,繰り返し送信数及び無線回線状態をパラメータとした伝送特性の理論式の導出に関しては,繰り返し送信数を2回に設定したときのスループットの理論式を導出予定であったが,ビット誤り率の理論式を導出するに留まった.一方,提案方式の繰り返し送信数は2のべき乗に設定するのだが,当初の予定よりも回数の多い4回,8回,16回に設定したときのビット誤り率についても解析し,繰り返し送信回数を一般化したときのビット誤り率の理論式を導出することができた. また,提案方式の優位性を実験的に検証するための実験プラットフォームの構築に関しては,当初の予定どおり,無線局免許が不要なFM電波(FMトランスミッターとFMラジオを使用),超音波,及び音波を活用した実験プラットフォームを構築しただけでなく,特定実験試験局による428MHz帯での伝送実験もできるように構築できた. 以上より,「おおむね順調に進展している」と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
研究実施計画では,2年目以降の計画として,「提案方式の波及効果の検討(高効率な繰り返し送信方法の追求)」と「実験的検証の実施」を掲げているが,基本は実施計画通りに研究を遂行する予定である. 前者に関しては,熱雑音環境下を想定し,繰り返し送信回数を一般化したときのパケット成功率及びスループットの理論式を完成させる予定である.また,フェージング環境下における伝送特性についても理論的に解明する予定である.導出した理論式を用いて,提案方式の優位性及びその波及効果を理論的に解明する予定である. 後者に関しては,初年度に様々な環境で実験できるプラットフォームが構築できたため,今後の研究では伝送距離に対するスループット特性を取得し,提案方式は無線エリアの広域化及びIoT機器の低消費電力化の観点で優位性があることを実験的に検証する.また,伝送路として可視光も追加する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度の研究において,特定実験試験局による428MHz帯での電波伝搬実験も実施できるように準備したが,この実験によって,提案方式の波及効果を実際の電波を用いて実験的に検証することができる.電波伝搬特性という観点では,より低い周波数帯(具体的には140MHz帯)を用いた実験を実施することで,提案方式の波及効果の検証をさらに確固たるものにすることができる.140MHz帯での電波伝搬実験を実施するにあたり,特定実験試験局の免許申請が必要であるが,その費用は当初の計画に無かったため,その費用に充てる.
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