研究課題/領域番号 |
21K04066
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研究機関 | 千葉工業大学 |
研究代表者 |
佐波 孝彦 千葉工業大学, 情報科学部, 教授 (60293742)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | SCMA / ファクターグラフ / メッセージ受け渡しアルゴリズム |
研究実績の概要 |
本研究では,次世代無線通信の多元接続方式として注目を集めている疎符号多元接続(SCMA: sparse code multiple access)について,低遅延・低計算量での復号を可能とする検波方式およびコードブック設計法を確立することを目的としている.2023年度は,前年度に引き続き低遅延・低計算量の検波方式を活かすためのコードブックの開発を行った.初年度に本研究課題で提案したIQ結合ファクターグラフを導入した検波方式は,受信信号の同相(I 相: in-phase)成分と直交(Q 相: quadrature-phase)成分を異なるリソース上の信号として扱い,見かけの重畳ユーザ数を削減することで計算量を削減した.2022年度は,さらに,IQ平面上にI軸Q軸をπ/4回転させた2つの直交軸を追加し,それぞれの軸の成分のみをもつ信号点を用いるコードブックを用いることで,IQ結合ファクターグラフを拡張できるようにした.2023年度はこの考えを更に発展させ,6サブキャリアを用いて8ユーザ分のシンボルを送信する方式に拡張(一般的なSCMAでは4サブキャリアで6ユーザ分)し,更に信号点配置を最適化し,信号点間の最小ユークリッド距離を最大化できるようにした.その結果,メッセージ受渡しアルゴリズム(MPA: Message Passing Algorithm)を用いた検波での繰り返し処理回数を約20%に削減でき,ビット誤り率が従来と同等の性能を維持する場合には,計算量を従来の8%に低減できることを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度にコロナ禍の影響で進捗に遅れが生じたため,全体としては遅れが生じていたが,現在は順調に進捗しており,最終的な成果の発表についてまとめ始めている.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる2024年度は,現在までにアイディアの整理と検証が一通り済んだため,現在は得られた知見を成果として論文誌へ掲載すべく,更なるデータの採と検証を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の蔓延により,最初の2年間に参加を考えていた国際会議等の研究発表の場にほとんどに参加できなかったため,研究自体はそれなりに進んだものの成果発表が後ろ倒しになった.それに伴って,旅費や会議参加費等の支出も後ろ倒しになった.加えて,物品費として,高速計算機の購入を予定していたが,世界的な半導体不足の影響と,製品ラインの切り替わり時期が重なったことにより,年度内での入荷が難しい状況になったため,次年度に繰り越して購入する必要があった.最終年度はこれら予定されていた支出を計画的に実行していく.
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