研究実績の概要 |
電波利用が増えるにつれて, 干渉電波によって生ずる無線通信の劣化が深刻な問題となっている. この通信劣化は電波の出入り口であるアンテナを機能化することにより防げる. このような機能化されたアンテナを干渉除去アンテナ(Anti-Interference Antenna: AI-ANT)とよぶ. 従来のAI-ANTは直線偏波用であり, 円偏波用AI-ANTの例はアンテナ構成が難しいために極めて少ない. 本研究の目的は, この困難を打破し, 新たに円偏波用AI-ANTを創造することにある. 本研究では, 新人工材料素子であるメタマテリアル・アトムを使用し, 厚みが2mm以下の超薄(1/100波長程度)であって, かつ平面構造となる様にアンテナを創造する. 2022年度に於いては,前年度に考察した放射体Aの外周に放射体Bを追加した. この放射体Bは放射体Aの2重メタループ構造とは異なり,単一のメタループアンテナで構成されている.放射体Bに対する放射体Aによる影響を考察するために,放射体Aを金属円板で模擬化している.放射体Bのループ円周を動作波長の実数倍で変化させ, 諸特性(放射パターン,利得, 入力)に関する影響を定量化した. この円周実数倍化に於いては, 電流の相対伝搬位相値に-1と+1との間の値を使用した. シミュレーションと実験から「模擬化金属円板が特別な値をとる場合を除き,放射体Aの諸特性はアンテナ固有の値に落ち着いている」ことが明らかになった.さらに「模擬化金属円板が特別な値をとる場合であっても,模擬化円板が放射体Aの下部にある金属平面(グランド板)と同じ電位になれば,放射体Aの諸特性はアンテナ固有の値に復活する」ことも判明した.
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は, 2021年度および2022年度に得られた知見を基に,放射体Aと放射体Bとを一体化する. この時,放射体Aに於いては放射位相が360度変化するように, 他方,放射体Bに於いては放射位相が720度変化するようにする.さらに,放射体Aにおいては異なる2つの周波数に於いて, 利得が同じ値をとるように検討を加える. 放射体AとBとの給電端子間の相互影響が少ない構成を獲得し, 両者の給電位相に差を与え, 干渉波除去を遂行していく.つまり,放射ビームに低受信感度箇所を生成ことにより, 干渉波を受信できない様にしていく.次に,以上の干渉波除去に関する理論構築を確実なものにするために, 実験による検証を遂行していく. この時,両者の給電位相に差を与えるために移相器を用いる.2023年度は最終年度にあたるので,これまでの研究を整理し成果の取りまとめを行う.
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