研究課題/領域番号 |
21K04070
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
小林 健太郎 名城大学, 理工学部, 准教授 (40583878)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 制御通信 / 無線制御 / 自律分散制御 / 無線分散ネットワーク / Robot Operating System / Wi-Fi RTT / ドローン |
研究実績の概要 |
ロボットやドローンなどを無線分散ネットワークを介して分散協調制御を行う無線制御システムについて,限られた無線通信リソースの下でさらなる制御性能の向上を図るため,制御と通信のクロスレイヤ設計・最適化について以下の検討を行った. (A)移動ロボットの自律分散制御において,キャリアセンス型多元接続の通信バックオフと制御周期が合意制御品質に与える影響の明確化に取り組んだ.通信バックオフを長く取るほど通信衝突が少なくなり合意制御品質が向上するが,制御周期が短いと期間内に制御情報を送信できなくなる可能性が生じて合意制御品質が劣化するトレードオフが存在する.これについてWi-Fi(IEEE802.11n)のCSMA/CA通信を用いた平均合意制御のシミュレーション評価を行い,通信バックオフと制御周期が合意制御品質に与える影響を評価した.また,通信衝突により受信できない制御情報を補うため,隣接するロボットから得た制御情報を自身の制御情報と合わせて転送する手法を考案し,合意制御品質に与える影響を評価した. (B)移動ロボットの制御において必要となる屋内で自己位置測定が可能な実験環境の構築に取り組んだ.1つは,自己位置の推定手法としてRobot Operating System(ROS)制御フレームワークのLiDAR SLAMに着目し,マイコンボードにROSを搭載した小型移動ロボットの実験環境を構築し,位置測定と必要となる通信パケットや通信データ量の評価を行った.もう1つは,自己位置の推定手法としてWi-Fiアクセスポイント間のRound Trip Time(RTT)による測距に着目し,マイコンボードにWi-Fi RTT(IEEE802.11mc)対応無線LANモジュールを搭載したドローンの実験環境を構築し,位置測定精度の評価を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(A)移動ロボットの自律分散制御におけるキャリアセンス型多元接続の通信バックオフと制御周期が合意制御品質に与える影響に関して,学会発表1件の成果を公表している.通信衝突により受信できない制御情報を補うため,隣接するロボットから得た制御情報を自身の制御情報と合わせて転送する手法に関しても,研究成果を電子情報通信学会の研究会にて公表予定である. (B)ROS制御フレームワークのLiDAR SLAMを用いた屋内で自己位置測定が可能な実験環境の構築では,地図構築と測位の負荷により遅延時間が発生し,また,複数台では干渉して位置推定が困難であることが分かった.一方,Wi-Fi RTTを用いた屋内で自己位置測定が可能な実験環境の構築では,飛行状態のドローンにおいても0.5秒間隔に1.5m程度の誤差で測位が可能な実験環境を構築できた.
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今後の研究の推進方策 |
(A)得られた成果に基づいて,単純な平均合意制御だけでなく,より一般化された合意制御や被覆制御に対しても提案手法の有効性の評価進める.また,提案手法を改良し,マルチホップ伝送との融合についても検討を進める. (B)Wi-Fi RTTによる屋内測位が可能な実験環境に注力し,位置測定アルゴリズムの改良による測位精度の向上,シミュレーションと対応できるドローンの移動モデルの構築を実験的に進める. 得られた研究成果は,電子情報通信学会やIEEEの各研究会・国際会議を通じて公表し,関連研究者の意見を取り入れ研究を進展させていく.
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次年度使用額が生じた理由 |
購入物品の構成によりわずかな差額が発生したが使用計画に変更が必要な額ではない.
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