ロボットやドローンなどを無線分散ネットワークを介して分散協調制御を行う制御システムについて,限られた無線通信リソースの下でさらなる制御性能の向上を図るため,前年度の検討を踏まえ,以下の検討を行った. (A)Wi-Fi等に採用されるCSMA/CA方式を採用した無線自律分散制御の性能向上に取り組んだ.無線自律分散制御では,無線通信により周囲のモバイルロボットのみと制御情報を交換し,局所的な情報のみで全体のフォーメーション制御を行う.その際,広範に位置する際の通信衝突の増加,また,集合による通信混雑の増加が生じ,制御品質が劣化する問題がある.本研究では,通信衝突等によって損なわれた制御情報を補填するため,自身の制御情報の送信に合わせて自身が制御周期内に周囲から受信できた制御情報も付与して同時送信するデータ転送手法を提案・発展させ,シミュレーション評価により合意制御や被覆制御における位置収束性の向上や移動時間の短縮ができることを明らかにした. (B)モバイルロボット(ドローン)の屋内移動において必要となる屋内測位方式について,ドローン搭載カメラと床面に配置したARマーカーを用いた屋内測位方式,および,IEEE802.11mc準拠のWi-Fi RTT(パケットの往復時間から測距を行う方式)を利用したドローンの屋内測位方式を検討し,実験により位置推定精度の評価を行った.ARマーカーによる測位では移動飛行時における数cmの測位精度を示した.Wi-Fi RTTによる測位では,ドローン搭載Wi-Fi端末から複数のアクセスポイントとの間をWi-Fi RTTにより測距する方式,および,複数のWi-Fi端末からドローン搭載アクセスポイントとの間をWi-Fi RTTにより測距する方式の2つの観点において,静止時の1-2m程度の測位精度に対して,ホバリング時にばらつきが増加する傾向を実験的に明らかにした.
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