2022年度は,走査型測定装置の改良,駆動電極とバイポーラ電極の表面修飾の検出性能への影響の評価,増感材を利用した高感度化法の検討,抗原-抗体反応の走査による連続検出を実施した。 昨年度行ったノイズ低減の効果により,測定精度が向上したことから新たに走査測定開始時と停止時でインピーダンス値が異なることが明らかとなった。検討の結果,このインピーダンスの違いは装置の傾き由来することがわかったため,新たにαβ軸傾斜ステージを導入し,傾きの影響を走査距離10cmあたりインピーダンス値として0.2%(傾斜0.05‰)以下に抑制した。駆動電極の表面積の増大は生体分子の検出感度に対して強く影響しなかった。生体分子を固定する足場としてバイポーラ電極表面の修飾に使用する単分子層の厚さも同様に,生体分子検出の感度に強い影響を見せなかったが,暑さに関しては最大感度を示す測定周波数に影響した。これは,単分子層の厚さに由来する容量の変化によるものであり,表面修飾法の選択により,最大感度を示す周波数を測定に適した周波数にコントロールできることを示している。また,磁性粒子を利用した生体分子検出の増感の結果,インピーダンス応答を2倍程度(10Hz)に増加させることに成功した。さらに,抗体固定化基板を作製し,抗原としてC反応性たんぱくの走査型連続検出を試みた結果,一般に検査の基準値とされる値を含む10-1000nMの範囲で濃度に依存した応答を得ることに成功した。
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