研究課題
本研究の目的は、組織サンプル内の細胞核の分布を3次元的に可視化するために、新しい高空間分解能位相コントラスト撮像法(X線回折波2重撮影法)を開発することである。本撮像方式に基づく装置を高エネルギー加速器研究機構(KEK)に構築し、物理ファントムや腫瘍組織の撮像実験を通じて有用性を実証する。本年度は、LAAの厚さが24umのアナライザー結晶の製作およびこの結晶の設置技術の開発を行い、高い空間分解能で生体試料の撮影を行うことができた。乳腺の非浸潤性乳管癌の撮像実験では、乳管内に生じる腺腔の構造を3次元的に描出することができた。また、吸収コントラストと位相コントラストを同じ画像上で同時に再構成できるX線回折波2重撮影法に基づくアルゴリズムを開発した。一般的に吸収が大きい物体に囲まれた軟組織を観察することは困難であるが、この方式を用いると、例えば頭蓋内の脳組織などを高いコントラストで撮影できる可能性がある。一方で、細胞核レベルの空間分解能を目指すためには、アナライザー以外のCTステージの回転精度や、X線シンチレータの厚さを考慮する必要があった。このため、新たに1um以下の回転精度を持つ高精度回転ステージを入手した。また、シンチレータ内で生じるボケとX線エネルギーとの関係から細胞核が描出できるX線エネルギーを決定した。本研究は、アメリカや韓国の共同研究者とも共同研究を行っており、本年度は韓国の共同研究者と行った肺の微小解剖学に関する研究が医学系の学術誌に掲載された。
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Cancers
巻: 16 ページ: 806~806
10.3390/cancers16040806