研究課題
強度変調放射線治療 (IMRT) 計画を実現する原理は,照射ビーム係数に関する評価関数の最適化問題に帰着される.本研究代表者は,先行研究において,線量体積制約および平均線量制約を満たす状況を表す acceptable の概念を新しく導入し,すべての線量制約が acceptable とは限らない精度の高い治療計画が要求される困難な問題に対し,必ず満たすべき制約条件と可能な限り制約に近づけたい条件に分離して最適化問題を定式化し,解決法の開発に成功した.ただし,可能な限り近づけたい条件を複数に与えると,より高精度な治療計画を効率的に実現できるが現方法では解決できない.この困難な問題に対し,線量制約を未知数として問題を定式化する新しい理論の構築可能性を想起した.前年度において,微分方程式系の数値離散による反復法を開発したことで高速演算を可能とした.さらに,系にみられる解が正値を保ち,評価関数が反復により単調減少する性質を理論的に示した.令和5年度は,提案原理を3次元画像に対応させて実行可能とするソフトウェアを作成し,臨床例に適用して有用性の検証試験を実施した.適用例として,一部の線量制約が許容できない高精度なIMRT計画を対象とし,必須条件として与えた制約を満たしながら,望ましい条件として定めたOARの線量低減を可能とする接近法や,PTVとOARの領域に重なりをもつ問題設定に対して効率的に解決を図る設計法を対象とした.頭頸部癌や前立腺癌などの症例を模擬した実験を実施し,OARの制約だけでなく,PTVとOARの重なり領域の上限線量体積制約も同時に望ましい条件とする提案法を用いることで,PTVに十分な線量を付与すると同時に,単独のOARだけでなくPTVとOARの重なり領域の線量を自動的に低減させる治療計画を達成できた.成果を複数の学会・研究会で報告し,意見交換を通して良い評価を受けた.
すべて 2024 2023 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件)
Physica D: Nonlinear Phenomena
巻: 446 ページ: 133667~133679
10.1016/j.physd.2023.133667
Algorithms
巻: 16 ページ: 60~75
10.3390/a16010060