昨年度に引き続き,汎用的な光学素子のみを用いた空間コヒーレンス計測法の性能を調べた.まず,その指標として従来の光計測技術と同様に伝達関数の導出を試みた.それから遮断周波数がわかれば,この計測手法の空間分解能を求めることができるからである.しかし,本手法の数式モデルでは,従来の光学技術の瞳関数に相当するものが得られなかった.そこで,光源の時間コヒーレンスに着目した.この計測手法ではミラーのティルトにより干渉計内の2光波において路長差が生じる.これまでは,この影響を小さいものとして無視していた.しかし,厳密には,光路長差が生じれば,干渉縞の強度にも影響する.この影響を考慮した結果,空間周波数と空間座標の両方に依存した関数を導出できた.この性質は,これまでの実験結果とも整合していることから,この計測手法の性能指標を新たに導出できたといえる.なお,光路長差を無視できるような光源,すなわち,高時間コヒーレンス光の場合は,空間座標には依存しないこともわかった.この場合は,空間周波数だけに依存する伝達関数として機能すると考えられる.次に,この計測手法における背景放射分離および透過物体への適用可能性を検討した.昨年度より,光源およびその回折光の統計的性質を活用することにより,高空間コヒーレンス光にも,この計測手法を適用できることがわかっている.これまでの低空間コヒーレンス光の場合の統計処理と組み合わせ,背景放射の分離可能性について検討した.同時に,撮影物体自身を移動することができれば,断層画像のように特定の位置における光波を取り出せる可能性もあり,その場合,透過物体への適用も可能である.その実現のための計測系の構築および実験的な検討もおこなった.
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