研究課題/領域番号 |
21K04091
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
原田 知親 山形大学, 大学院理工学研究科, 助教 (50375317)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 多端子MOSFET / SOI-MOSFET / 間接計測 / HSPICE等価モデル |
研究実績の概要 |
2021年度では、一般的に使われている0.18μmCMOSデザインルールを用いて試作した多端子MOSFETを用いて、電流検出動作等の評価・解析と、シミュレーションによる解析モデルの構築を実施した。その結果、多端子MOSFETのレイアウト図を参考に、メインのゲート面積をもつ回路MOSFETと、出力端子側のゲート面積をもつOutput検出MOSFETとに分け、Output端子分だけ複数個直列に並べ、それらと回路MOSFETとの並列接続による構成を電子回路CAD上で作製し、実デバイスによる測定結果と比較した。その結果、強反転動作であれば、本研究で試作した等価モデルを用いて多端子MOSFETの動作を表現できることに成功した。 次に、多端子MOSFETや派生種である8角形構造MOSFETを用いて電流・磁界・温度の検出動作について、0.18μmCMOSデザインルールを用いて試作した多端子MOSFETやその派生種である8角形多端子MOSFETを用いて測定・評価を行った。その結果、磁界検出では、どのOutput端子対を用いても印加磁界に対して線形に変化しており、磁極が反転すると出力の正負も反転していることが分かる。感度は最大で13.7mV/Tとなった。温度では温度感度は148μV/℃となった。電流に関しては、MOSFETの動作の振る舞いがそのまま多端子MOSFETのOutput端子の電位差にあらわれていることを確認した。また、これをSOI基板上で作製したデバイスでも、同様に把握できることを確認できた。 最後に、2022年度の研究に向けた予備実験として、ディジタル回路のインバータに多端子MOSFETを組み込み、インバータ回路の回路動作を多端子MOSFETのOutput端子でモニターしたところ、まだ不完全ではあるが、インバータを流れる貫通電流の振る舞いを観測することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度では、一般的に使われている0.18μmCMOSデザインルールを用いて試作した多端子MOSFETを用いて、電流検出動作等の評価・解析と、シミュレーションによる解析モデルの構築を実施し、多端子MOSFETのレイアウト図から、等価回路を電子回路CAD上で作製し、実デバイスによる測定結果と比較し、強反転動作であれば、本研究で試作した等価モデルを用いて多端子MOSFETの動作を表現できることに成功した。 次に、多端子MOSFETや派生種である8角形構造MOSFETを用いて電流・磁界・温度の検出動作について、0.18μmCMOSデザインルールを用いて試作した多端子MOSFETやその派生種である8角形多端子MOSFETを用いて測定・評価を行ない、印加磁界に対する応答と磁極反転の検出、温度変化の検出やMOSFET動作時のドレイン電流の振る舞いが、そのまま多端子MOSFETのOutput端子の電位差にあらわれていることを確認した。 2022年度の研究推進に必要な予備実験として、多端子MOSFETにより構成されたインバータの静特性の計測から、インバータを流れる貫通電流をOutput端子電圧から間接計測できるかどうか評価を行ない、貫通電流の振る舞いに同期してOutput端子電圧が変化していることを測定から確認することができ、2021年度に予定していた研究計画に対して概ね順調に推移していると結論できる。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度では、2021年度で得られたデバイスや回路動作の知見をもとに、多端子MOSFETをディジタル回路の情報処理回路部分に適用し、多端子MOSFETによるセンサ・回路の一体集積化を試み、性能と動作そして環境変化(温度・磁界など)に対する挙動の測定・評価を行う。具体的には、2021年度では予備実験としてインバータ回路単体での組み込みで検証したが、2022年度では、もう少し大きな規模のディジタル回路やアナログ回路を用い、確立した等価モデルを使っての回路設計を試み、回路動作全体に対する静特性や動特性の評価をおこなう。これにより、多端子MOSFETによる回路動作状況のモニタリングが可能であるかどうか検証する。特に動特性では、高速動作時のnMOS/pMOS各Output電圧による回路動作の間接計測とその特定方法、各Output端子の活用方法を検討し、更に精度を上げていく方向で検討する予定である。 最終年度では、2022年度で得られた試作回路をもとに、実際のIoTシステムに組み込み、長期動作を実施し、集積回路の置かれている動作環境のデータ収集・解析を実施する。これを通じて、本研究の有用性を実証する予定である。
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