研究課題/領域番号 |
21K04094
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
笹岡 直人 鳥取大学, 工学研究科, 教授 (80432607)
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研究分担者 |
岡本 芳晴 鳥取大学, 農学部, 教授 (50194410)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ミリ波ドップラーレーダ / 心拍検出 / 高次統計量 / 信号処理 |
研究実績の概要 |
本研究は、主に犬や猫などの小動物を対象として、ミリ波ドップラーレーダを用いる非接触心拍検出について高次統計量を利用した干渉成分に頑強な手法の開発を目的とする。ミリ波ドップラーレーダを用いる非接触心拍検出は、体表面に現れる心臓の周期的な動きを捉える手法である。しかしながら、受信信号には、呼吸成分、呼吸と心拍との相互作用による成分、周囲に存在する人や動物からの反射波による干渉成分が含まれている。そのため、心拍検出性能が著しく劣化する問題を抱えている。そこで、これらの干渉を抑えるための非接触心拍検出システムの開発を行う。 2021年度は、バイスペクトルを用いる非接触心拍検出について、原理検証を進めるために,被検体である人と,干渉源である他人を配置した実験を実施した。その結果、バイスペクトルを用いる非接触心拍検出手法では、干渉源の有無に関係なく誤差率約5%程度の心拍検出性能が得られた。いくつかの従来手法により得られる誤差率が13%~43%であったことを考慮すると、提案手法により大幅な性能向上が可能であることが示された。また、干渉源のない実験より、被検体の位置による誤差率の差は少なく、かつ従来手法よりも誤差率が改善していることから、高次統計量を用いることにより、提案手法が雑音に耐性のある方法であることが示された。 また、相互変調積成分に頑強な非接触心拍検出手法について方式の基本的手法について提案を行った。相互変調積成分の周波数は、呼吸数に対応する周波数と心拍数に対応する周波数、それぞれの整数倍の和と差により与えられる。まずは受信信号の電力スペクトルからピークを複数検出する。これは、相互変調積成分の候補となる。また、呼吸に対応する周波数は精度よく推定できることから、心拍数を検出することが可能となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度の研究計画は、バイスペクトルを用いる非接触心拍検出の原理検証、相互変調成分に頑強な非接触心拍検出手法の基本概念の提案、システム検討用データ取得(動物実験)の実施であった。バイスペクトルを用いる非接触心拍検出の原理検証について、いくつかの実験により高次統計量を用いることの重要性が示された。また、相互変調積成分に頑強な非接触心拍検出手法についても基本的な手法の有効性が示され、おおむね順調に進んでいる。さらに動物実験も順調に進んでおり、研究全体としておおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度の研究計画として、研究代表者(笹岡)は、研究統括およびバイスペクトルを用いる非接触心拍検出および相互変調積成分除去手法の開発を担当する。具体的な項目は下記のとおりである。 A)バイスペクトルを用いる非接触心拍検出「システム開発」:バイスペクトルにより検出対象外の影響を抑圧する手法の原理を引き続き検証するとともに、動物実験で得られるデータをもとに心拍検出システムの開発を行う。 B)相互変調積成分に頑強な非接触心拍検出手法「システム開発」:相互変調積成分に頑強な非接触心拍検出手法について、システムとして動作させるための回路構成を検討する。 研究分担者(岡本)は、動物医療センターにおいて各システム開発に用いる基礎データとなる動物の心拍、呼吸情報取得並びに電波照射実験を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、研究調査のために学会出張の予算を計上していたが、新型コロナウィルスにより学会がオンライン開催に代り、出張による支出が抑えられ、次年度使用が生じた。今年度は、対面による学会開催が再開される見込みであること、また動物実験の回数が増える見込みであるため、それらに利用する予定である。
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