CFRP 複合材は、その構造から超音波試験に対して本質的な困難さを伴っている。困難さの一つが高い減衰率である。複合材を構成する基材(樹脂) による粘性減衰、樹脂/繊維界面における散乱が原因と考えられている。もう一つは、音速(位相速度) の異方性である。すなわち、線維と平行な向きには速度が速いが、そうでない向きには遅いという性質である。そのため、伝搬速度 が方向によって異なるため、伝搬時間に基づく手法では傷の正確な位置がもとまらないという問題が起こっている。本研究では、高い減衰率による問題に対しては、中心周波数が30kHz程度の低いガイド波を用いて回避している。同時に、低周波数による低分解能に対して、点波源拘束偏微分方程式に基づいた撮像手法を導入することによって超解像を実現し、問題を回避している。つぎに、異方性の問題に対して、波動場をLp空間で表現し、擬似的なグリーン関数を用いてその空間での点波源拘束偏微分方程式を考えCFRP板材中の欠損のシルエット撮像を実現している。等方性弾性体薄板を伝搬するA0モードラム波動場におけるグリーン関数の距離の項をLp空間における距離に置き換えたものを擬似的なグリーン関数とおき、それを用いて板材の法線方向の面外変位とその互いに直交する面外せん断歪みの互いの自己相関および相互相関から欠損検出が可能であることを実証した. さらに最終年度では、等方性弾性体薄板と、炭素繊維強化樹脂の薄板に人工的な欠損を施し、板材の法線方向の面外変位とその互いに直交する面外せん断歪みの互いの自己相関および相互相関から欠損のシルエットを再構成した結果を示すことに成功した.
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