研究課題/領域番号 |
21K04103
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
長田 洋 岩手大学, 理工学部, 教授 (10261463)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 制御 / 恒温植物 / ザゼンソウ / 生物模倣 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,ザゼンソウの地中器官が,その発熱制御機構に及ぼす影響の調査とその機能の解明である.ザゼンソウの肉穂花序が動物に匹敵するエネルギー密度で発熱できるのは,球茎に蓄えたエネルギー源である糖を効率的に利用しているからであり,その様子は茎を流れる流水量を正確に計測することにより,よりよく知ることができると考えられる. 研究期間前半の2021年度と2022年度は,ザゼンソウ専用茎内流水量計測システムの完成を目指し,そのハードウェアと制御ソフトウェアの開発に取り組んだ。2021年度は,疑似的なザゼンソウ茎モデルに対し,同径方向への熱移動を動的にキャンセルする機構を導入することで,ゼロ流量時の特性から求める必要があった定数kの使用を不要とすることに成功したが,茎へセンサを取り付ける際に発生する熱的非対称性に起因する測定値のドリフト現象への有効な手法が確立できていなかった.2022年度は,それまで一定量としていた印加熱量を周期関数とし,センサ間の位相差を計測する手法を検討した.その結果,測定値のドリフト現象の改善に加えて,流量ゼロ近傍の測定も可能となるような結果が得られた. また,毎年度3月~4月にかけて,ザゼンソウ群生地より開花中の生体を採取し,開発中の流水量計測システムにて,周囲温度と球茎部の温度を独立に制御した場合の応答特性等を計測した.これまで採取した16個の個体では,明確に恒温制御している生体は取得できていないが,実験で得られたデータからは以前の実験で観測されていたバラつきが低減しており,周囲温度と球茎部の関係性が徐々にではあるが推測可能となってきている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度までは,主にザゼンソウ専用茎内流水量計測システムの完成を目指す期間であり,熱収支法を原理とする専用茎内流水量計測システムの抱える課題に取り組んできた.2021年度に,実質的に測定不能なパラメータである係数kを含まない流量式とするための取り組みにある程度成功していた. 2022年度は,センサを熱的に対称に取り付けることが困難なことに対する解決策を検討した.原理としては,熱の伝達速度を直接測定することにより補正を行うことである.それまで一定量としていた印加熱量を周期関数とし,各センサ間の位相差を計測する手法を検討した.3Dプリンタで作成したアクリル製のザゼンソウ茎疑似モデルに対して,様々な周期と振幅の熱量を印加したところ,測定値のドリフトが実質的に無視できるような結果を得ることができた.また,加えて,オリジナルの熱収支法では発散してしまう,ゼロ流量にごく近い流量の計測も可能となるような結果も示された. ただし,これらの装置を実際の生体に適用したところ,外気温の変動に敏感すぎるなど,予想通りの結果を得ることが出来なかった.ザゼンソウ茎疑似モデルと生体のザゼンソウでは,熱容量やその表面の物理的・熱的特性の差が少なくないことが要因と思われる.
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今後の研究の推進方策 |
ザゼンソウに最適化した茎内流水量計測システムを創造して,より信頼性の高い実験結果に基づき,2025年度までの期間をもって,ザゼンソウの地中器官が,その発熱制御機構に及ぼす影響の調査とその機能の解明を目指した. 2022年度までに,計測システムの完成を目指していたが,現時点では,まだ完成と言える特性が得られていない.したがって,2023年度も引き続き計測システムの完成度を上げる取り組みを行う.現在の方式は熱収支法とヒートパルス法を組合せ,改良した方法といえる.生体の,特に表面状態に由来する熱特性のバラつきを高い精度で吸収することは困難であるが,周期関数を使うことで,より精度よく流量を評価できるシステムとしたい. 茎内流水量計測システムの改良と並行して,今後も毎年3月~4月のザゼンソウ開花時の生体特性の評価を行う.ザゼンソウ開花時の発熱制御期間は数日であり,受粉のため一斉に開花することから,その調査期間は長くても1カ月程度である.これまでは,1セットの計測システムで評価してきたため,1シーズンで評価できる個体数が10個程度に限られていた.計測システムの計測精度も向上してきたため,もう1セット構築して,今後は2セットで収集データの増加を図りたい. これらの研究から得られた知見を,随時国内外の学会で報告し,適切なアドバイスを頂戴する。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度は気象状況によりザゼンソウ群生地での生体採取期間が例年より短期間となってしまった.そのため,計画していた採取および実験補助費用の一部が未使用となった. 今年度は,実験セットを2倍とすることを予定しているため,そこで必要となる実験補助費等に使用したい.
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