研究課題/領域番号 |
21K04105
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
小林 泰秀 長岡技術科学大学, 工学研究科, 准教授 (50272860)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 二入出力系の熱音響コア部に基づく安定性解析手法 / 定常発振制御系の安定性解析と補償器設計手法 |
研究実績の概要 |
当初、音源の位置を移動させて共振周波数を掃引する周波数応答計測機構の開発を進める予定であったが、本研究課題の前提となる、熱音響コアの片側にサイレンサーを配置して取得・算出した圧力振幅をパラメータとする2入出力系のコア部の周波数応答に基づいて圧力振幅を推定する手続きの検討が不十分であることがわかったため、これを含めて初年度は主にハードウェアの更新無しで進められるソフトウェアの検討を先に行った。すなわち、コア部の周波数応答計測において音源の駆動信号から各圧力センサの出力信号までの周波数応答が同時計測可能であることに着目し、コア部高温側の管路部を接続したときに低温側に入射する進行波圧力成分(B2)から放射される進行波圧力成分(A2)までの周波数応答を、B2の振幅をパラメータとして算出できることを示した。これを改めて高温側の管路部も含めた1入出力系のコア部の周波数応答とみなすことで、先行研究の手法を用いて発振時の圧力振幅が推定できることを示した。ただし、サイレンサーの吸音性能が不十分なため、能動的に反射を抑制するための大規模加振器を製作した。この他、実施計画の項目毎の進捗状況は以下の通りである: 1-1. 共振掃引型周波数応答計測系(開ループ型)の補償器構成手法の開発:制御系のPIゲインの平面における安定領域は加振周波数に依存する双曲線で決まること、対象とする全周波数帯域において制御系が安定となる共通のPIゲインが存在すること、適当な近似に基づき共通のPIゲインを構成する手法を示し、この成果をシステム制御情報学会に論文投稿した。 2-1. 管路長可変音響計測系の改善:④外部設定可能なプログラマブルフィルタを導入した。 2-2. 熱音響コアの改善:現有のコアの問題(PWMのon/off制御式ヒータによる数秒周期の温度変動)解決のため電圧制御型のヒータに換装し、温度制御できることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(i)熱音響コアの片側にサイレンサーを配置して取得・算出した2入出力系のコア部の周波数応答は、高温側から放射される進行波圧力成分(B1)および低温側から放射される進行波圧力成分(A2)それぞれの圧力振幅をパラメータとして持つが、これと先行研究の、高温側に接続された管路も含めた上で低温側の圧力振幅をパラメータとする1入出力系のコア部の関係が明らかではなく、先行研究の自励発振時圧力振幅を推定する手法の単純な拡張は自明でなかった。 (ii)上記、サイレンサーを用いて半無限長の管路を模擬することは現実的には困難であり、この模擬(サイレンサー側からの戻りの進行波圧力成分は0)を前提として算出された1入出力系のコア部の周波数応答は、先行研究で実測された周波数応答を十分に再現しなかった。
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今後の研究の推進方策 |
(i)の問題に対しては、概要で述べた通り、2入出力系のコア部の周波数応答を1入出力系に変換することで自励発振時圧力振幅を推定する手法を開発した。ただし、(ii)の問題を含めて、圧力振幅の推定精度の評価が不十分なため、(ii)の問題を解決した後に、ループ管熱音響システム等、解析対象を増やして推定手法の妥当性を検証する。 (ii)の問題に対して、令和3年度に製作した大規模音源を用いて半無限長管路を能動的に模擬することでサイレンサーを置き換え、周波数応答計測を行う。これが圧力振幅の推定精度向上につながるか検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
「現在までの進捗状況」に記載した通り、当初は測定管路中で音源の位置を移動させることで共振周波数を掃引する周波数応答計測機構の開発を進める予定であったが、熱音響コアの片側にサイレンサーを配置して取得・算出した圧力振幅をパラメータとする2入出力系のコア部の周波数応答に基づいて圧力振幅を推定する手続きの検討が不十分であったため、初年度は主に現有のハードウェアを用いて進められるソフトウェアの検討を優先的に実施し、ハードウェアの更新を伴う内容は次年度に実施することとした。
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