本研究では,以下の三点の課題に取り組んできた. 課題① ガウス過程回帰により得られる離散時間システムと,これまで広く研究されてきた離散時間確率システムとの関連性を見出す. 課題② 確率システム制御理論に基づくガウス過程回帰で表されるシステムに対する系統的な解析・制御器設計の枠組みを構築する. 課題③ 実問題への適用により,理論と実用性を実機検証により評価する.
2023年度は,課題①に対して前年度までに得られた結果の拡張と課題③に主に取り組んだ.課題①においては,学習データに観測ノイズが含まれる場合におけるガウス過程回帰システムと統計的対応をもつ離散時間確率システムを定式化した.これまでに得られた結果として,離散時間確率システムとの関連付けを見通しよくするために用いていた学習データの線形変換は,観測ノイズを含む場合には対応する離散時間確率システムにおける観測ノイズの分散を拡大してしまうため,S/N比の改善の役割を果たす調整パラメータを新たに導入し,これまでの結果を拡張した.つぎに,この結果と課題②の結果を用いて課題③に取り組んだ.今年度は,6軸センサを搭載した3次元剛体姿勢制御実験装置を用いて実機検証を行った.実験データから学習データセットを構築し,線形変換を施した後ガウス過程回帰システムを得ることができ,このシステムと統計的に対応する離散時間非線形確率システムモデルを構成することができた.このモデルを用いた姿勢制御器により姿勢制御を行い,目標姿勢軌道への追従が達成できることを確認した.本手法は,実験データから,これまでの知見により制御機設計および安定性解析が可能な非線形確率システムモデルをシステマティックに構成することができ,モデル化から制御をシームレスに行える利点を確認することができた.
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