疲労を伴う運動タスクにおいて,客観的価値である筋活動電位(EMG)から主観的価値である疲労感を推定することが目的である.昨年度までは,取得した21名のデータを身体的特徴に基づいてクラス分類し,「痩せ型高身長タイプ(第1クラス)」,「中肉中背タイプ(第2クラス)」,「それ以外(第3クラス)」の3つに分類していた(第1クラスは3名,第2クラスは8名,第3クラスは10名).特にクラス内相関が高い第2クラスを対象として,主観的データを目的変数,客観的データを説明変数としたファジィ線形回帰モデルを構築することで,真値と推測値が同じ量子化エリアに含まれる数が期待値を上回る結果を得ていた. 一方で,ファジィ線形回帰モデルは説明変数が1/0に二値化されること,説明変数の関係性が線形に限定されるため表現力に乏しいことから,CRNN(Convolutional Recurrent Neural Network)を用いて非線形関係としてモデル化し,主観的疲労の推定精度向上を目指した. CRNNとは,CNNによる特徴抽出とRNNによる時系列対応により高精度な時系列パターンの学習が可能であり,CRNNの学習はCNNとRNNを別々に学習する2段階学習を用いることで,特徴量をCNNにより抽出し,RNNにより時系列に対応した学習と識別を可能とした. その結果,主観的疲労の時間的変化について第1クラスでは18.83%,第2クラスでは10.08%,第3クラスでは11.25%の平均誤差率で推定できることが分かった.クラス内相関が高いほどモデル精度が高くなる結果であった.また,説明変数には生体信号が含まれることから,個人毎のゆらぎに精度が左右されやすい.そのため,ゆらぎの少ないデータのみを選定してCRNNでモデリングを試みたところ,最良精度2.8%の平均誤差率にて主観的疲労の時間的変化を推定することが可能であった.
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