本研究の目的は,脳卒中や脊髄損傷を患い下肢の運動に障害を抱える人の残存する筋の筋力維持と運動特性の向上ならびに身体のバランスを鍛えることを目指し,機能的電気刺激(Function Electrical Stimulation,以下FESと呼ぶ)を用いた下肢リハビリテーションシステム(以下,下肢リハビリシステム)を提案することであり,具体的にはしゃがみ込んだ状態からの FES 立ち上がり運動に対する制御手法の確立(課題1),身体のバランスを保ちながら立ち上がり運動を補助するリハビリシステムの構築(課題2),ならびに個々人の筋特性に合せた刺激方法の検討(課題3)を実施することであった. 最終年度は構築した FES 立ち上がり補助システムを用いて,提案する制御手法にて重心位置を考慮した立ち上がり運動を実現した(課題1と課題2の達成).特に,立ち上がり運動中に下肢への筋刺激と併せて,重心移動の変化を促すために安全に上肢へ筋刺激を加えるために制御バリア関数を用いた手法を適用した点が学術的に意義が高いと考えられる.また,身体の左右差(例えば片麻痺患者においては下肢の筋特性に左右差があるためまっすぐ立ち上がるのが難しいなど)からくる重心位置の左右の変化を可視化するために,比較的安価な市販のバランスWiiボードを活用した重心計測システムを構築した.課題3の個々人の筋特性に合せた刺激方法の検討においては,個々人の筋特性の同定までは至らなかったが,片麻痺や対麻痺などの状況を再現するためにシミュレータの構築を進めた.研究期間全体を通して,得られた成果の一部を学術雑誌や国際会議発表にて報告した.
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