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2022 年度 実施状況報告書

非協調・非協力動的システムの動的システム科学と制御

研究課題

研究課題/領域番号 21K04117
研究機関東京工業大学

研究代表者

早川 朋久  東京工業大学, 工学院, 准教授 (30432008)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード非協調システム / インセンティブ設計 / メカニズムデザイン / ゲーム理論 / パレート改善
研究実績の概要

人間の社会的・経済的活動を制御理論の枠組みを用いて定式化を行っている.社会状態の改善にはインセンティブ設計を適切に設定することが重要であるが,そのインセンティブの財源とのバランスを取り,実行可能なメカニズムを構築することが運用上必要である.このメカニズムを用いて,戦略空間内で2主体の最適戦略集合を定めたときに,過渡軌道が収束せず周期解が現れる/現れないための条件を求め,周期解は孤立解か稠密か,周期解の中心には平衡解があるのか,等の解析を行った.また,ゲーム理論的枠組みを状態方程式を用いて定式化し,レプリケータ力学系などに加えて,これまで動的システムとしては考慮されてこなかった人間-情報系の代表的モデルを動的にモデル化し解析を進めている.

さらに上記で構築したメカニズムを用いて,各主体の最適戦略集合の共通点が孤立点でない場合にその点はNash均衡解となるか検討を行った.協調・非協調関係で,協調行動は自己の利益最大化を犠牲にして,他の「何か」を最大化することを他の主体と共同で行うことと捉えられるが,この際の両者の利得関数はどのように特徴付けられるか,他者の利得関数の情報を持っているか否か,その情報保持関係に対称性がある場合と非対称な場合で特徴付けがどのように変わるかの考察を行った.技術的には,ポテンシャルゲームとパレート改善の不一致性を同定し,共通のポテンシャルによって規定されるゲーム関係よりも広いクラスのゲームを適切に設定することによって,社会全体の厚生を高めるためのインセンティブ設計に成功している.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本提案研究の中間年度にあたり,初年度の研究結果を拡張して,人間の社会的・経済的活動を制御理論の枠組みを用いて定式化しインセンティブ設計論を構築するという目標に向けて,解析を進めることができている.特に,インセンティブの適切な設定には,財源とのバランスを取り,実行可能なメカニズムを構築することが重要であるが,これまでのインセンティブ設計論ではあまり考慮されてこなかった予算制約やパレート改善の手法など,新たなパラダイムを提案しながら理論研究を進めることができている.

これらの初期的成果は複数の学術誌・国際会議において発表・発表準備を行っており,順調に成果発表が行われていると考えている.

今後の研究の推進方策

これまでのメカニズムデザインでは,各エージェントの利得関数はスカラー値を取るとするものが主体となっているが,2023年度の研究では利得関数がベクトル値を取るものとして解析とインセンティブ設計を行っていく.このとき,Nash均衡集合の定義から精査して設定していく必要があるが,概念的・実践的に妥当なNash均衡集合と疑似勾配ベクトル場をベクトル値利得関数を扱う場合に定義し,解析を行っていく.されにインセンティブ設計の枠組みを構築していくが,インセンティブとしてまず金銭を想定することが自然であるため,ベクトル値利得関数の一部の要素にのみ影響を与えうるインセンティブ構造となる.このとき,どのような条件が成り立てば,社会状態がパレート改善可能であるか,その条件式を導出していく.また,非協調システムが不確かさを包含する場合や,各エージェントの利得がその時々の評価感覚によって不確かなゆらぎが生じる場合,インセンティブ設計者としてのインセンティブ設計には注意が要求される.このような不確かさを内包する非協調システムにおいて,メカニズムデザインに隠れ状態 (hidden state) のような要素を加えることによってダイナミックなパラメータ設定を可能にする枠組みを与え,社会全体の状態をセンシングしながら動的にパラメータを変更できるインセンティブ設計を構築していくことを目指す.

2023年度は本提案研究の最終年にあたるため,これまでの研究の総まとめを行い,順次成果発表に繋げていく予定である.

次年度使用額が生じた理由

(理由)
新型コロナ禍による世界的影響により,複数の学会発表がオンライン開催となったため.
(使用計画)
2023年度は現地開催での国際会議が原則再開予定であるため,計画通りそれらの旅費に充てる.

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2024 2023 2022 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 5件)

  • [国際共同研究] New York University(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      New York University
  • [雑誌論文] Hierarchical Noncooperative Dynamical Systems Under Intra-group and Inter-group Incentives2024

    • 著者名/発表者名
      Yan Yuyue、Hayakawa Tomohisa
    • 雑誌名

      IEEE Transactions on Control of Network Systems

      巻: - ページ: 1~12

    • DOI

      10.1109/TCNS.2023.3242359

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Effects of Jamming Attacks on Wireless Networked Control Systems Under Disturbance2023

    • 著者名/発表者名
      Cetinkaya Ahmet、Ishii Hideaki、Hayakawa Tomohisa
    • 雑誌名

      IEEE Transactions on Automatic Control

      巻: 68 ページ: 1223~1230

    • DOI

      10.1109/TAC.2022.3153275

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Rolling horizon games of resilient networks with non-uniform horizons2022

    • 著者名/発表者名
      Nugraha Yurid、Cetinkaya Ahmet、Hayakawa Tomohisa、Ishii Hideaki、Zhu Quanyan
    • 雑誌名

      European Journal of Control

      巻: 68 ページ: 100693~100693

    • DOI

      10.1016/j.ejcon.2022.100693

    • 査読あり
  • [学会発表] Supply/demand analysis in ``colored’’ hydrogen transactions and potential for carbon neutrality2023

    • 著者名/発表者名
      Tomohisa Hayakawa, Masato Kigoshi
    • 学会等名
      IEEE IAS Global Conference on Renewable Energy and Hydrogen Technologies
    • 国際学会
  • [学会発表] Pseudo-gradient dynamics with Level-k predictions in noncooperative dynamical systems2022

    • 著者名/発表者名
      Yan Yuyue、Hayakawa Tomohisa
    • 学会等名
      IEEE Conference on Decision and Control
    • 国際学会
  • [学会発表] Rolling horizon games of resilient networks with non-uniform horizons2022

    • 著者名/発表者名
      Nugraha Yurid、Cetinkaya Ahmet、Hayakawa Tomohisa、Ishii Hideaki、Zhu Quanyan
    • 学会等名
      European Control Conference
    • 国際学会
  • [学会発表] Pareto Improving Incentive Mechanism for Noncooperative Dynamical Systems Under Sustainable Budget Constraint2022

    • 著者名/発表者名
      Yan Yuyue、Hayakawa Tomohisa
    • 学会等名
      American Control Conference
    • 国際学会
  • [学会発表] Equilibrium seeking in two-agent non-cooperative dynamic game with asymmetric horizon length2022

    • 著者名/発表者名
      T Tanaka, Yasuaki Wasa, Tomohisa Hayakawa
    • 学会等名
      Asian Control Conference
    • 国際学会

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公開日: 2023-12-25  

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