研究実績の概要 |
令和3年度の研究計画に従い、CuxAg1-xGaS2(CAGS)半導体結晶(x=1, 0.5, 0.25, 0)を垂直ブリッジマン法により育成した。まず、Cu, Ag, Ga, Sを化学量論的に秤量し、石英管内に真空封入することで石英アンプルを作製した。作製したアンプルは2ゾーン横型電気炉に設置し、高温部が1100°C、低温部が700°Cとなるように段階的に昇温、その後35時間保持することで硫黄化を行った。次に硫黄化した試料を再度真空封入することでアンプルを作製、縦型電気炉に設置し、室温から最高温度の1060°Cまでゆっくりと電気炉の温度を上昇させた後、24時間保持した。その後、~1 cm/dayの速度でアンプルをゆっくりと降下させ、電気炉の温度勾配を利用して融液を徐冷し、結晶を育成した。 結晶成長後アンプルから取り出したCu組成x=0.25のインゴットでは、先端部と上部では、明るい朱色から暗い赤色と場所により色が異なっており、また多くのクラックやボイドが発生した結晶となってしまった。これは、融液が不均一のまま結晶化が起こってしまったためと考えられた。このため、x=0.25, 0.5については再度結晶成長を行った。これらの組成の試料については、融液を均一化するために、硫黄化した試料を封入したアンプルを20°傾斜させた管状電気炉内に設置、ゆっくりと加熱し、最高温度の1100°Cにおいて一定時間アンプルを回転させる(20 rpm)という工程を新たに加えた。その後、温度勾配を有する縦型電気炉にアンプルを再び設置し、~1 cm/dayの速度でアンプルを炉内降下させることにより結晶を育成した。このような工程を加えた結果、取り出したインゴットはほぼ均一な色をしており、ボイドも無い単相の結晶を得ることができた。
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