本研究ではデバイス特性と回路との整合性の高い2端子対回路網評価法を用いて、デバイスシミュレーションへの物理モデル取り込み、等価回路との関連性を研究した。 まず、光励起することでトラップ電荷を変化させ、時定数の短い(応答周波数の低い)トラップを検出することを試みた。その結果、緑色レーザで光照射し、電流-電圧特性と2端子対回路測定を実施すると、いずれの特性も光照射で変化することがわかった。しかし、応答の大きさが小さく、信号の検出が難しかった。 そこで、ゲート電圧を0 Vとすることで、AlGaN/GaNヘテロ界面に2次元電子ガスを形成させ、GaN層とAlGaN層を電気的に分離した状態で2端子対回路網を評価した。さらに小さい変化を検出するため、ドレイン電圧を1~2 Vステップ、温度を20℃ステップと細かく体系的に評価することで、トラップ信号を追跡した。また、デバイスシミュレーションを活用し、トラップの応答の様子を解明した。トラップの位置や性質を体系的に変化させ、回路パラメータである小信号特性を計算した。実測と計算結果を対応させながら解析を進めた。その結果、Y22(ドレイン電極に入力する小信号交流電圧に対するドレイン電流の応答)にはGaN層のトラップのみが応答することがわかった。また、Y21(ゲート電極に入力する小信号交流電圧に対するドレイン電流の応答)にはGaN層トラップとAlGaN層トラップの両者が応答していることがわかった。同じ種類のトラップは同じ時定数をもつことから、Y21の周波数特性からY22のGaNトラップに対応する周波数を消すことでAlGaNトラップの信号を特定することが可能である。さらにGaNトランジスタの小信号等価回路において、ソース・ドレイン間にGaNトラップ、ゲート・ドレイン間およびゲート・ソース間にAlGaNトラップを対応させることができた。
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