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2021 年度 実施状況報告書

環境水中のマイクロ・ナノ粒子の濃縮・分離用三次元誘電泳動フィルタの創成

研究課題

研究課題/領域番号 21K04140
研究機関芝浦工業大学

研究代表者

西川 宏之  芝浦工業大学, 工学部, 教授 (40247226)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワードマイクロ・ナノ粒子 / 誘電泳動 / プラスチックごみ / 環境水
研究実績の概要

水環境におけるマイクロプラスチックごみが顕在化し、国連SDGsの課題等の1つとして地球規模で社会問題化しつつある。プラスチックごみは5mmから300μm程度のいわゆる「マイクロプラスチック(MP)」、あるいはそれ以下の「スーパーマイクロプラスチック(SMP)」に分類される。前者はその物理的な捕集と可視化が比較的容易であるが、環境水中の「ナノプラスチック」を含む100nm以下のナノ粒子(NP)の捕集と検出は極めて困難であり、かつ藻類などの粗大な夾雑物の混在により、SMPおよびNPの可視化と環境水中での動態解明を困難にしている。
各種ナノ粒子は可視化や機器分析が極めて困難であるため、環境水中等を遍歴するナノ粒子の動態を正確に評価するためのモニタリング技術の開発が焦眉の急である。本研究の目的は、独自の陽子線描画による精密加工・試作技術を援用して作製した誘電体マイクロ構造を用い、水中での微細粒子の三次元泳動を電気的に制御する。これにより、環境水中のマイクロ・ナノ粒子選別・濃縮工程を簡易化・迅速化し、喫緊の海洋環境の課題解決に資することである。
本研究では「サイズや有機・無機の多様な組成からなる水環境中のSMPおよびNP等のマイクロ・ナノ粒子をいかに選択的に捕集し、検出するか」という課題に対して、電気工学およびマイクロ・ナノ工学の視点から課題を解決する。具体的には、水中マイクロ・ナノ粒子の不均一電界下での誘電泳動により、選別と濃縮による可視化を目的として、以下の2課題に取り組んでいる。 今年度は、課題(1)単層・階層型PMMAピットアレイを陽子線描画により試作し、作製工程を確立する、課題(2)単層PMMAピットアレイにより各種SMP/NPの個々の誘電泳動特性を明らかにする、の2課題について取り組んだ。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

誘電泳動デバイスを構成する単層ピットアレイの作製については、プラスチックフィルムをベースとする安定な作製手法を確立することができた。また、粒子のサイズ選別を可能にする階層構造の作製については、陽子線描画を用いた微細加工の原理的な検証のためにエネルギー制御による手法に加えて、イオン種の制御に基づく加工深さ制御手法を検討した、これにより、本研究における位置合わせ精度の課題を明らかにすることができた。当初予定していたマイクロ・ナノ粒子の捕集は標準粒子としてマイクロプラスチック粒子および金属ナノ粒子に関して、PMMAピットアレイを用いて誘電泳動による捕集効果を確認できた。
単層PMMAピットアレイの作製に取り組むとともに、階層型PMMAピットアレイのため、ビームエネルギー制御と集束、および位置合わせ精度向上に取り組んだ。前者については各種ピット形状のピットアレイ作製に成功し、誘電泳動実験に供した。その結果、単相PMMAピットアレイによりマイクロプラスチックの誘電泳動特性を明らかにすることができた。また、ナノ粒子についてはナノ銀粒子のピットアレイによる捕集に成功した。ナノプラスチックについては現在モデル粒子の検討を進めている。

今後の研究の推進方策

誘電泳動デバイスの作製プロセスの研究および原理検証については、計画通りに進捗しているが、より高効率のデバイス作製のため、ピット構造および配置に関する最適化に向けたデバイス設計にも着手する必要性がある。特にピット構造近傍における電界シミュレーションにより、誘電泳動力の作用範囲を見積もり、マイクロ・ナノ粒子を高効率で捕集可能なデバイスを構築する。また、デバイスを構成する材料として、大面積化を想定してドライフィルムなどの他のレジスト材料の利用を検討開始した。
さらに複数のビームエネルギーを用いた陽子線描画装置の制御パラメータを探索することに加えて、同一エネルギーで質量の異なる分子イオンを用いた描画法の検討も行い、階層構造を有するピット構造体作製のための陽子線描画の技術上の課題を明らかにする必要がある。

次年度使用額が生じた理由

旅費および参加登録費として計39万円を国外出張を計上していたが、コロナウイルス禍の影響で海外で開催される国際会議への参加は行わなかった。その他の経費約4万円も含めて、約43万円を次年度に繰り越した。これらは次年度の消耗品費として計上し、新たな誘電泳動デバイスの設計および製造技術の見直しに伴う新たなレジスト材料等を導入するための消耗品として計上する。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2022 2021 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件)

  • [国際共同研究] モンクット王工科大学トンブリ校(タイ)

    • 国名
      タイ
    • 外国機関名
      モンクット王工科大学トンブリ校
  • [雑誌論文] Utilizing a photosensitive dry film resist in proton beam writing2022

    • 著者名/発表者名
      Seki Hironori、Kawamura Keiya、Hayashi Hidetaka、Ishii Yasuyuki、Puttaraksa Nitipon、Nishikawa Hiroyuki
    • 雑誌名

      Japanese Journal of Applied Physics

      巻: 61 ページ: SD1006~SD1006

    • DOI

      10.35848/1347-4065/ac55e1

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Dielectrophoretic Devices Fabricated by Proton Beam Writing for Concentration, Assembly, and Detection of Nanoparticles2021

    • 著者名/発表者名
      Nishikawa Hiroyuki、Kimura Toshiki、Kawashima Ryousuke、Yamamoto Ken、Uchida Satoshi、Ishii Yasuyuki
    • 雑誌名

      IEEJ Transactions on Fundamentals and Materials

      巻: 141 ページ: 574~578

    • DOI

      10.1541/ieejfms.141.574

    • 査読あり
  • [学会発表] 集束陽子線描画により作製したマイクロ構造体によるフォトニックナノジェット生成と共焦点顕微鏡観察2022

    • 著者名/発表者名
      瀬谷 大也、前田 祐希、田中 柊生、関 宏範、松井 龍之介、西川 宏之
    • 学会等名
      応用物理学会春季学術講演会
  • [学会発表] 集束陽子線描画により作製したマイクロ構造体によるフォトニックナノジェット生成と共焦点顕微鏡観察2022

    • 著者名/発表者名
      瀬谷大也, 前田祐希, 田中柊生, 関宏範, 松井龍之介, 西川宏之
    • 学会等名
      電気学会研究会
  • [学会発表] 水環境中のポリスチレン微粒子の捕集に及ぼす誘電泳動用ピットの影響2021

    • 著者名/発表者名
      関宏範, 林秀臣, 内田諭, 西川宏之
    • 学会等名
      電気学会基礎・材料・共通部門大会
  • [学会発表] 集束陽子線描画を用いた印刷用スタンプの作製とa-IGZO薄膜の転写特性2021

    • 著者名/発表者名
      川村恵矢, 林秀臣, 関宏範, 西川宏之
    • 学会等名
      電気学会基礎・材料・共通部門大会
  • [学会発表] エポキシ系導電性カーボンナノコンポジットの陽子線描画によるパターニング2021

    • 著者名/発表者名
      野原悠暉, 林秀臣, 西川宏之
    • 学会等名
      令和 3 年電気学会基礎・材料・共通部門大会
  • [学会発表] Utilizing a photosensitive dry film resist in proton beam writing2021

    • 著者名/発表者名
      Hironori Seki, Keiya Kawamura, Hidetaka Hayashi, Yasuyuki Ishii, Nitipon Puttaraksa and Hiroyuki Nishikawa
    • 学会等名
      34th International Microprocesses and Nanotechnology Conference
    • 国際学会

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公開日: 2022-12-28  

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