研究課題/領域番号 |
21K04157
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
西尾 太一郎 東京理科大学, 理学部第二部物理学科, 教授 (40370449)
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研究分担者 |
有沢 俊一 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 上席研究員 (00354340) [辞退]
山森 弘毅 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 研究部門付 (00358293)
田中 康資 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 上級主任研究員 (70357440) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | トポロジカルソリトン / 量子位相 / 磁束量子 / SQUID |
研究実績の概要 |
我々は、2018年に2つの量子位相をもつ人工的な2バンド超伝導体Nb/AlO/Nbを作製することに成功し、Nb/AlO/Nbにおいて2つの量子位相の間にソリトン型の位相差が生じることを実験的に示した。位相差は、超伝導体中をソリトンとして伝播することが予想されるが、伝播実験に成功した例はまだ報告されていない。本研究の目的は、Nb/AlO/Nbに電流などを印加して位相差を駆動し、位相差のソリトンとしての振る舞いを観測することである。 当該年度は前年度からの引き続きで、ソリトンの伝搬を観測するためのセンサーの開発とセンサーを用いた伝搬実験を行った。位相差は、超伝導体で発生する磁束量子の磁束量から知ることができるため、超伝導体の上に微小なSQUID素子を多数個置き、各位置でのSQUIDのアウトプットにより位相差を観測する。前年度においてリソグラフィーにより2バンド超伝導体Nb/AlO/Nbの上に多数のSQUID素子を実装することに成功した。今年度はこのセンサーを用いて位相差の伝搬に関する実験を行う予定であったが、磁束量子とSQUID素子の相対位置によって観測される磁束量が変化してしまう問題が起こり、この解決に時間を要したため、伝搬実験が思うように進まなかった。今のところ伝搬実験に成功しておらず、実験回数をさらに増やす必要がある。世界的なヘリウムの供給不足が続いており、現状では実験回数を増やすことが難しいため、研究期間を延長して研究を遂行したい。 今年度は成果報告として査読付き論文発表を1報行った。学会・国際会議の発表は行わなかったが、次年度に今年度の成果を発表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ソリトンの伝搬を観測するためのセンサーの開発が終わり、現在ソリトンの伝搬実験に取り組んでいる。当初は今年度中に伝搬実験を完遂する予定であったが、世界的なヘリウムの供給不足が続いているため、実験回数を制限しなければならず全体的に研究が遅れている。研究期間を1年延長して本研究を遂行していきたい。
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今後の研究の推進方策 |
伝搬実験の回数が少ないため、実験を引き続き行っていく。実験で得られた知見を基に回路を改良していきたい。特にNb/AlO/Nb上のピンホールのサイズが大きいとソリトンが完全に捕捉されて伝搬しないので、必要であればピンホールのサイズを変更したい。磁束量子とSQUID素子の相対位置によって観測される磁束量が変化してしまう問題があるため、現在使用している回路の他にSQUID顕微鏡を用いてNb/AlO/Nb上の磁束量子を直接観測し、磁束量を測定することも同時に進めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額のほとんどは、当該年度にヘリウム代として使用する予定であった予算である。当該年度は世界的なヘリウムの供給不足により、ヘリウムを予定どおり購入できなかった。実験でヘリウムが必要なので、次年度使用額はヘリウム代にあてる予定である。
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