研究課題/領域番号 |
21K04159
|
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
岩田 展幸 日本大学, 理工学部, 教授 (20328686)
|
研究分担者 |
高瀬 浩一 日本大学, 理工学部, 教授 (10297781)
清水 智弘 関西大学, システム理工学部, 教授 (80581165)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | CaFeO3 / LaFeO3 / 積層膜 / パルスレーザー堆積法 / 電界印加型不揮発性磁気メモリー / 非極性/極性界面 / 基板表面処理の最適化 |
研究実績の概要 |
本年度は、冷却水が装置内部に飛散したことから、装置内部の全部品の解体・組み立て、オーバーホール、ベーキングによる修理が大半の時間を要したため、成膜が困難な状況であった。したがって薄膜作製は行えなかったが、先に成膜するであろう基板表面処理について最適条件を探索した。 本研究で重要なCaFeO3成膜用の基板LaAlO3について、NaOH水溶液でエッチング、アニールを施し、最適な表面処理条件を確立した。通常、CaFeO3は、Fe4+が不安定であるため、Ca2Fe2O5が成長しやすい。実際に、格子ミスマッチが-3.36%のSrTiO3基板上に成膜したが、初期の約3ユニットは、CaFeO3が成長しやすく、その後Ca2Fe2O5が成長する。SrTiO3との大きなミスマッチが原因でCaFeO3が成長していると考えている。CaFeO3/LaFeO3の非極性/極性界面が電界印加型の不揮発性磁気メモリー作製において、最も重要な達成すべき項目である。しかしながら、CaFeO3の3ユニット成長表面にしても、Ca2Fe2O5成長がゼロでは無いことは確認している。 LaAlO3を濃度12MのNaOH水溶液でエッチングし、1000&℃、1時間でアニールした結果を説明する。エッチング溶液内にLaAlO3基板を浸漬させそれぞれ5、10、15、20、30分で超音波を印加した。表面像、位相像、摩擦力顕微鏡像で評価した。5、10分ではエッチングが不十分でAlO2層、LaO層が混在する結果となった。一方、エッチング時間が長い20、30分では、エッチングが進行し、ステップに沿ってホールが見て取れた。15分では、非常期にきれいなステップ-テラス構造が得られ、摩擦像からも単一の層が表面に現れている結果を示した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
予定では、「非極性/極性」界面を持つCaFeO3/LaFeO3積層幕を層状成長させ、強磁性が発現するLaFeO3の体積ユニット数を明らかにすることであった。しかしながら、「研究実績の概要」にも記載したとおり、冷却水が装置内部に飛散したことからくる全ての不具合を修理しなければならなかったため、多くの時間が経過し、成膜にはいたらなかった。一方、CaFeO3と格子ミスマッチが-0.301と非常に良いLaAlO3基板の表面処理の最適化を完了したことから、装置修理後、すぐにでも成膜できる状態にある。また、酸化力の高いオゾンも導入可能であるため、Fe4+が不安定のCaFeO3薄膜を成膜可能であると期待している。
|
今後の研究の推進方策 |
比較的、基板表面処理が簡便なLaAlO3、LSAT、NdGaO3基板の表面処理最適化を行う。LaAlO3については、NaOH水溶液、LSATは、エッチングとアニールを交互に繰り返しながら最適化を行う。NdGaO3は、BHFの濃度を変えてエッチング・アニールを行う予定である。SrTiO3も含め、成膜装置内で、最大1200℃のアニールを行って、基板表面の清浄化を実施する。冷却水が飛散したことによる装置の不具合において、ターゲットホルダー、RHEEDガン、オゾンガス導入、超高真空用超高温基板加熱機構は、すでに修理・オーバーホール済みである。加えてエキシマレーザのメンテナンスも終了した。現在、最適基板ホルダーの作製、RHEEDスクリーンの設置が残る課題であるので、性急に修理を急ぐ。 最適化を実施した基板上にCaFeO3薄膜の作製を行う。XRRおよびXRDにおいて、面内、面直方向のデータを取得することで、Ca2Fe2O5でなく、CaFeO3がエピタキシャル成長していることを確認する。エピタキシャルCaFeO3上にLaFeO3を積層させる。LaFeO3の積層数によって、磁気特性がどのように変化するかを確認する。これまでは17ユニットを閾値として、反強磁性から強磁性に変化したことを確認したが、再現性を実行する。また、LaFeO3の積層数による磁化変化と共に、電界印加による磁化変化をMFMを用いて実証する。併せて、電界印加が可能であるか、また、CaFeO3、LaFeO3単結晶独自の電気抵抗を示すか、面直・面内方向にて確認をする。TEM・EDXを用いて、CaFeO3の結晶構造を原子レベルで確認することで、電界印加による磁化変化の一つの証拠とする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、冷却水が装置内部に飛散したことから、装置内部の全部品の解体・組み立て、オーバーホール、ベーキングによる修理に大半の時間を要したため、成膜が困難な状況であった。したがって薄膜作製は行えなかった。一方、ターゲットホルダー、RHEEDガン、オゾンガス導入、超高真空用超高温基板加熱機構については、すでに修理・オーバーホール済みである。加えてエキシマレーザのメンテナンスも終了した。しかしながら、依然として、最適基板ホルダーの作製、RHEEDスクリーンの設置が残る課題であるので、性急に修理を急ぐ。成膜が行えなかったため、各種消耗品の購入を行わなかった。また、研究分担者が実施予定のSTEM+EDXを実行できなかったため残高が発生した。 上記したように、次年度は全ての装置類を正常に稼働させて、積層膜を作製し、STEM+EDXによる積層膜界面の原子レベル解析を実施する予定である。併せて、CaFeO3/LaFeO3の積層数による磁化変化と共に、電界印加による磁化変化をMFMを用いて実証する。
|