本研究は半導体素子の形成工程を経ることなく、積層構造を有する半導体基板の電気物性・界面品質を、高精度に評価する手法を開発することを目的とする。積層基板向けの電気物性の評価手法であるPseudo-MOS法を交流法に拡張し、積層薄膜界面の電気的品質を評価する手法を開発する。 2023年度は前年度研究で観測された抵抗成分の解析と交流信号のチャネル上伝搬が容量特性に与える影響を検証した。抵抗成分の解析では、抵抗成分の半導体基板内における発生箇所同定のために、試料端からの距離依存性を検証し、抵抗成分が試料端からの距離に対応して単調に増減することを確認した。この結果から金属探針を中心として放射状に広がる抵抗成分であると推定され、その中で交流信号のチャネル上伝搬とは異なる抵抗成分、つまり半導体基板の上層半導体層におけるバルク抵抗に起因することを明らかにした。交流信号のチャネル上伝搬が容量特性に与える影響の解析では、積層半導体基板に印加する直流電圧と印加周波数を変更して解析を行った。低印加周波数(数百Hz以下)では特異な特性は確認されず、積層半導体基板の構造から理論的に予測される標準的な容量電圧特性であったが、高印加周波数(数十kHz)では構造から予測される容量値を超える値が観測された。容量特性の印加周波数依存性を検証した結果、特定周波数で極大値を持ち、その極大値と極大値を示す周波数がチャネル抵抗に依存する特性となっていることが判明した。この結果は過年度に作成した交流信号のチャネル上伝搬を表す解析モデルと対応する結果となっており、本結果をまとめた論文を論文誌に投稿し採択された。
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