研究課題/領域番号 |
21K04176
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
高橋 駿 京都工芸繊維大学, 電気電子工学系, 准教授 (60731768)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | フォトニック結晶 |
研究実績の概要 |
本研究は、光の完全な制御が可能となる三次元フォトニック結晶を半導体で作製し、これに電気的接続を試みることで、将来の光・電子回路の三次元集積デバイスにおける重要な素子のひとつとして、高効率な電流注入型の発光デバイスを開発することを目的としている。2年目であった当該年度では、1年目に設計した半導体薄膜構造に基づいて、三次元フォトニック結晶の作製を行った。電子線リソグラフィおよびドライ・ウェットエッチングによって、新たに設計したGaAs薄膜を作製し、マイクロマニピュレーション法によって、この薄膜を1層ずつ積層することで、半導体三次元フォトニック結晶の作製に成功した。ただし、作製した試料の光学測定については、所属機関において実験室を含む建物の改修が長期間にわたって行われたため、測定を十分に実施することができなかった。その分、次年度に行う計画であった、pn接合を有する半導体薄膜を用いた三次元フォトニック結晶の設計に前倒しで着手した。パターンマスクを施した複数回のイオン注入によって、活性層を含む半導体基板の面内にp型・n型ドープを縞状(100ミクロン周期)に形成することについて、イオン注入を依頼する外部企業との打ち合わせを進めている。 一方で、1年目に実施した三次元フォトニック結晶の設計については、蘭国Twente大学の教授との国際共同研究を行い、その成果を国際学会で発表したほか、学術論文としてもまとめて国際共著論文として出版した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2年目であった当該年度では、1年目に設計した半導体薄膜構造に基づいて、三次元フォトニック結晶の作製を行った。電子線リソグラフィおよびドライ・ウェットエッチングによって、新たに設計したGaAs薄膜を作製し、マイクロマニピュレーション法によって、この薄膜を1層ずつ積層することで、半導体三次元フォトニック結晶の作製に成功した。ただし、作製した試料の光学測定については、所属機関において実験室を含む建物の改修が長期間にわたって行われたため、測定を十分に実施することができなかった。 現在は改修が終了し、光学測定系の再構築を進めている。電気的な接続を施した半導体三次元フォトニック結晶において、活性層を流れる電流がレーザ励起によって変化することを観測するために、極低温(4K)での測定が可能な顕微光学系を組み、ロックインアンプを用いた電流測定の準備を行っている。 一方で、当初は次年度に行う計画であった、pn接合を有する半導体薄膜を用いた三次元フォトニック結晶の設計に前倒しで着手した。パターンマスクを施した複数回のイオン注入によって、活性層を含む半導体基板の面内にp型・n型ドープを縞状(100ミクロン周期)に形成することについて、イオン注入を依頼する外部企業との打ち合わせを進めている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度では、まず、2年目に実施予定であった光学測定を行う。作製したn型ドープ半導体三次元フォトニック結晶に対して電気的接続を試み、n型半導体層を流れる電流がレーザ励起によって変化することを観測する。励起光の波長については、活性媒質のみが選択的に励起されるように選択する。なお、検出される電流変化は微小であるため、活性媒質における量子効率の高い極低温(4K)で測定を行い、電流の変化をロックインアンプを用いて検出する。この測定結果からのフィードバックも含めて、配線用の引き出し線の設け方など、最適な半導体薄膜構造に向けて継続して改善を進める。 次に、当初の計画どおり、pn接合を有する半導体薄膜を用いて三次元フォトニック結晶を作製し、活性層において電流注入発光を測定する。パターンマスクを施した複数回のイオン注入によって、活性層を含むGaAs基板の面内にp型・n型ドープを縞状(100ミクロン周期)に形成する。そのp/nの境界が中心となるようにGaAs薄膜構造を形成し、マイクロマニピュレーション法によって積層する。その後、電極を接続し、電流注入による三次元フォトニック結晶内の活性層の発光を観測する。特に、三次元フォトニック結晶のバンド端やバンドギャップの効果によって、その発光が増強・抑制されることを調べる。さらに、三次元フォトニック結晶内にナノ共振器を導入し、電流注入によるレーザ発振を目指す。電流注入によるキャリア数が足りない場合は光励起との併用も検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
「現在までの進捗状況の理由」に記述したとおり、研究の進展に遅れが生じたため。 現在は測定系の構築中であり、当初計画の設備備品を購入して、系を完成させる予定である。また、その他の消耗品なども計画どおり購入し使用する予定である。ただし、昨今の半導体不足および電気料金の高騰により、設備備品費およびクリーンルーム利用料が大幅に上がることが予告されており、使途を改めて検討する可能性もある。
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