研究課題
本研究は、光の完全な制御が可能となる三次元フォトニック結晶を半導体で作製し、これに電気的接続を試みることで、将来の光・電子回路の三次元集積デバイスにおける重要な素子のひとつとして、高効率な電流注入型の発光デバイスを開発することを目的とした。まず、電気的な接続を考慮した半導体三次元フォトニック結晶の構造設計を行った。蘭国Twente大学の教授との国際共同研究を通じて、数値計算による電磁場解析を行い、本研究における技術で作製可能な最適な構造を見出した。この設計に基づいた試料作製では、新たに光学顕微鏡観察下での高精度で簡便なマイクロマニピュレーション積層法を開発し、これを駆使することで電気的接続可能な三次元フォトニック結晶の作製に成功した。次に、三次元フォトニック結晶を構成する半導体薄膜に量子ドットを導入し、金属電極上に配置して、低温でのフォトルミネッセンス測定を行った。その結果、量子ドットの発光波長を印加電圧によって制御する、量子閉じ込めシュタルク効果の観測に成功した。さらに、電気的な接続を施した半導体三次元フォトニック結晶において、量子ドット活性層を流れる電流がレーザ励起によって変化することも観測した。以上の結果を踏まえて、本研究の最終的な目標である、三次元フォトニック結晶ナノ共振器を利用した電流注入型の高効率な小型レーザの実現に向けて、pn接合を有する半導体薄膜を用いた三次元フォトニック結晶の作製を行った。ここに電極を接続して共振器モードを示唆する結果を得た。所属機関において実験室を含む建物の改修が長期間にわたって行われたため、測定が滞ることもあったが、最終的には研究目標を概ね達成することができた。
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