本年度は、一昨年度、昨年度までに得られた研究成果をもとに、革新的内部構造を持つ新規積層型ベーパーチャンバーの研究目標を達成するために研究開発を実施した。具体的には、初年度である令和3年度においては、新たに創製した革新的内部構造を実現するために、まずコンピューターシミュレーション法であるVOF法(Volume of Fluid)を用いて種々の構成における冷媒の流動特性を調べた。また、現有の3Dプリンター(Form 3)を用いて微細流路のモデルを作製して冷媒の流動特性を調べた結果、VOF法によるシミュレーション結果の妥当性が明らかとなった。なお、3Dプリンターによるモデル作製については、種々のレジンにより微差流路モデルを作製し、ベーパーチャンバーに適したレジンを決定した。その結果、微細流路作成には、特にリジッド4Kとリジッド10Kレジンが好適であることがわかった。さらに、決定した微細流路構造を持つサンプルの作製を行い、冷媒の封入・封止を行い、試作サンプルの熱的特性を調べた結果、十分な温度平滑化効果を発揮することがわかった。これにより、内部構造の妥当性が確認された。 2年度目、3年度目については、内部構造の最適化をさらに進めた。具体的には、昨年度に引き続きVOF法によるシミュレーションと、試作サンプルによる特性評価を行い、内部構造が冷媒循環特性や伝熱特性に与える影響を調べた。その結果、微細流路の幅と深さに加えて、流路の配置が冷媒循環特性および伝熱特性に非常に大きな影響を与えることを明らかにした。さらに、作製したサンプルの熱伝導率評価を実施した結果、従来構造の積層多がベーパーチャンバーよりも遥に薄型である本開発サンプルが従来と同等の熱伝導率を発揮することを明らかにし、内部構造の妥当性を確認した。 また、本研究開発成果をもとに出願済み特許の対応を進め、特許査定を得た。
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