研究課題/領域番号 |
21K04181
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
田中 愼一 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (00556243)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 増幅器 / 高調波処理 / 右手系左手系複合線路 / F級 |
研究実績の概要 |
携帯電話基地局の電力増幅器を高効率化するための高調波処理回路を極めて小さなCRLH線路のみで構成できることをシミュレーションと実験で検証した。今年度の研究実績は以下の通りである。
1)2GHz帯R級GaN HEMT増幅器を試作し,最高水準の電力付加効率79.3%を達成した。このときの高調波処理回路は,従来のマイクロストリップ線路を用いる高調波処理回路と比較して1桁もしくは2桁小さな回路面積であった。本成果はEuropean Microwave Conference2021にて発表した。 2)CRLH線路のみ用いる高調波処理の手法を逆E級増幅器に適用する検討を行なった。逆E級増幅器は他の動作級の増幅器と比較して,広帯域で高効率を維持する潜在能力を有している。しかしながら,逆F級増幅器は,スイッチングコイルやFETの寄生成分を補償するコイルが必要で,それらのコイルの損失が逆E級増幅器の潜在的に高い効率を損ねる恐れがあった。今回検討した手法により,これらのコイルの効果もCRLH線路の機能に取り込むことで,顕にコイルを用いる必要がなくなることが期待される。本検討の成果は電子情報通信学会の総合大会(3月)にて口頭発表した。 3)近年注目されている連続F級モード増幅器を1ポートCRLH線路で実現する方法を提案した。連続F級モード増幅器は高調波処理の効果を超広帯域で維持することを可能にするが,チェビシェフフィルタを用いて極めて広い帯域で基本波から高調波までインピーダンスを制御する必要から,回路サイズが極端に大きくなるという課題があった。今回,高調波は1ポートCRLH線路で制御し,基本波のみチェビシェフフィルタで処理する新しい回路構成を提案し,シミュレーションと実験から従来よりも1桁小さな回路面積で1.7GHzから2.3GHzの帯域で80%の高いドレイン効率を維持できる見通しを得た。本成果は,電子情報通信学会のソサイエティ大会(9月)および総合大会(3月)にて口頭発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
小型サイズのCRLH線路のみで高調波処理を実現する手法を提案し,10W高出力増幅器にて79.3%という世界トップクラスの付加電力効率を実現した。高調波処理の占有面積はFETと同等であり,高調波処理回路が増幅器全体に占める割合は実質的に無視できる。これは高調波処理回路を既存の高出力増幅器に容易に導入できることを意味しており,実用的にも大きな意義を有する。
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今後の研究の推進方策 |
本手法がR級増幅器の高調波処理にとどまらず,F級,逆F級,E級,逆E級など任意のモードの高調波処理に適用できることを実証する。さらに連続F級動作をはじめ連続的に高調波処理を行う広帯域増幅器に適用し,同種の増幅器の大きな課題であった回路サイズの問題を根本的に解決できることを実験的に示す。
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次年度使用額が生じた理由 |
3月の国内学会が新型コロナ感染の拡大のためオンライン開催となり,予定していた国内旅費の予算執行が難しくなった。
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