2023年度は,連続高調波処理を使わない方法としては最も広い帯域で動作する高効率逆E級増幅器を実現した。従来の連続高調波処理を用いる増幅器(連続F級増幅器など)は回路サイズが非常に大きくなる課題があった。そこで,最終年度は,潜在的に広い帯域で高効率動作することがわかっている逆E級増幅器に着目した。しかし,マイクロ波帯ではFET外部に設けたコイルとの共振を利用してFETの寄生容量を補償する方法が採られるため,動作が狭帯域化し,逆E級動作の本来の広帯域特性を引き出すことができなかった。提案方法では,周波数が変化しても外部コイルのインダクタンスが常に寄生容量を補償できるように変化できると仮定し,そのときのFETにとって最適な高調波負荷インピーダンスの数値表を作成した。任意の高調波負荷インピーダンスを実現できる1ポートCRLH線路の特徴を利用して,数値表のインピーダンスを再現できるようCRLH線路を設計した。提案した手法を用いて2GHz帯10W出力の逆E級GaN FET増幅器を試作した結果,440MHzの帯域幅にて70%以上のドレイン効率を維持することに成功した。この帯域幅は連続F級増幅器などと比較して遜色のない性能で,それを1桁小さな回路面積で実現できたことは実用上インパクトが大きい。本成果は国際会議EuMC2024にて発表する予定である。
研究期間全体を通して得られた成果は以下の通りである。1ポートCRLH線路を用いることで,(1)小さな回路サイズながら世界トップクラスの電力効率を実現できることを実証(2021年度)し,(2)回路サイズの肥大化が課題であった連続F級/逆F級増幅器を従来の1/5程度の回路面積で実現(2022年度)し,(3)連続モードを使わなくても逆E級増幅器にて,従来の連続モード増幅器の1/10の回路サイズで高効率・広帯域の増幅器を実現(2023年度)した。
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