研究課題/領域番号 |
21K04188
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
横山 梨香 東北大学, 工学研究科, 技術一般職員 (80722173)
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研究分担者 |
松浦 祐司 東北大学, 医工学研究科, 教授 (10241530)
柿野 聡子 東京医科歯科大学, 歯学部附属病院, 講師 (30516307)
木野 彩子 東北大学, 医工学研究科, 学術研究員 (30536082)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 反射型光電脈波 / 歯髄脈波 |
研究実績の概要 |
本研究では市販の脈波検出用ICチップを歯牙の表面に装着して検出される,拡散反射光から歯髄の活性度診断を行う光電脈波法(光プレチスモグラフィ)システムの構築を最終的な目的としている. 初年度においては,反射型光電脈波法を用いた歯髄脈波取得に成功したが,歯肉の歯髄脈波が取得されていることが示唆された.そこで本年度は歯肉脈波及び歯髄脈波の差別化について検討を行った. 歯髄脈波を効果的に検出可能な光照射位置および照射光波長を調査するために,抜去歯の歯髄腔に血液を注入したモデルを作製した.このモデルに対し,マルチモードファイバにより白色光を入射,ほぼ同位置に配置したファイバにより拡散反射スペクトルを得た.血液導入前後の反射光スペクトルを血液のそれと比較し,血液の吸収により500‐650 nm付近で反射光パワーが低下していることがわかった.光照射位置を移動しながら得たスペクトルに対し,重回帰分析を行うことにより,血液の吸収の影響を血液注入前のスペクトルに対する係数比として示した結果,歯肉との境界から4-5.5 mm程度離れた位置で血液の吸収の影響が大きく現れることを確認した.これは象牙質内の象牙細管が歯髄腔に向かって斜走構造になっているためと考えられる. また,抜去歯を用いて歯肉脈波モデルを構築し,歯肉由来脈波の影響についての検討を行った.モデルを用いた脈波検出を行った結果,歯髄脈波測定における最適距離においては,歯肉の影響を受けないと考えられる.したがって,反射型光電脈波法を用いて測定された脈波は歯髄由来の脈波であることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ADコンバータを搭載した微小なICチップを用いることにより,電磁ノイズを抑制しそれを可能とする.さらには,より高いサンプリング周波数を用いることにより脈波の精密な形状を測定し,そこから算出した加速度脈波およびPTTから,歯髄脈波と歯肉から検出される脈波を差別化し,より正確な診断を想定していたが,切歯での脈波測定において現在使用しているLED波長や光強度ではノイズが大きく,正確な診断が困難であるため,使用しているデバイスそのものの改良に時間を要している.
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は、センサの取り付け位置及び歯肉脈波の差別化についての検討を行い,最適なセンサの取り付け位置が歯肉から4-5.5mmであることが分かった. 令和4年度は,サンプル数を増やし,個体間における検証を行う.また,現在は切歯での脈波検出しか行えていないため,臼歯の歯髄脈波の検出を行う.臼歯は切歯とは象牙質の厚みや形が異なるため,現在使用している波長よりも長波長にしないと歯髄脈波が検出できないと予想される。LEDの光強度を高め最適波長について検討を行う.また,個体間の歯の形に合わせることが出来るようフレキシブルな基板の製作も行い,反射型光電脈波法システムの構築を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では,歯髄脈波が測定できているものと思い研究を進めていたが歯肉の影響を受けている可能性があることから,研究の計画を一部変更し,歯のモデルを用いた実験を優先して行った.そのため,測定系に使用する消耗品を購入した.次年度では,モデルに使用するウマ血液の購入やそれに伴うポンプの購入,またフレキシブル基板の製作や研究成果発表のために使用する予定である.
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