初年度に,横方向に32本の銀/電気光学ポリマー/銀構造のプラズモニック光位相変調器を並列に並べた構成で,波長λ=1.55μmで動作するプラズモニック光フェーズドアレー(POPA)を提案して設計を行った.このPOPAは,端面光放射タイプのフェーズドアレーであり,32本の位相変調器に電圧を印加して端面近傍の光の等位相面をxz面内で一直線状に傾けると,出力光は横方向に100度以上の広い範囲で偏向走査可能な素子を設計した.光出力ピークは1本,|9.5|V程度の低い電圧印加,70μm×26μmの小型サイズで,高速かつ低消費電力など,従来素子を超える性能を示した.しかし,出力光は上下方向には位相面が円弧形状に広がって空気領域に放射するため,出力光を平行ビームに補正するには円柱レンズなどを用いる必要があった.最終年度は,上記POPA構造に回折格子付スラブ導波路(空気/回折格子付有機コア層/石英基板構造)のコア層を直接突合せ接続した集積型POPAを設計することを目的とした.POPA領域から角度θで回折格子スラブ導波路に入力した光は導波路中を進行しつつ,回折格子により上側(または下側)の空気側に光放射する.光偏向の操作方法については,(i)入力する光の波長λを変えたり,(ii)POPA領域に加える電圧を制御してスラブ導波路に光入射する角度θを調整して行う.(i)と(ii)の2つの操作を行うことで,空気側へ出力する光の方向を変えることができる.具体例として回折格子の周期間隔Λ=0.97μm,有機コア層の屈折率n=1.7,厚さ0.8μmの回折格子スラブ導波路をPOPAに接続し,波長1.55μmで導波路面から垂直方向の空気中へ光出力する構成とした.(i)波長を1.4~1.7μm,(ii)偏向角度θ=0°~±30°に制御すると,光放射方向が空気側へ広い光放射範囲で可変できるPOPAを設計した.
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