研究課題/領域番号 |
21K04199
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
下村 和彦 上智大学, 理工学部, 教授 (90222041)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 半導体レーザ / シリコンフォトニクス / 有機金属気相成長 / 集積化 / InP |
研究実績の概要 |
シリコンプラットフォーム上に化合物半導体レーザを集積化する技術として、申請者が提案したハイブリッド集積の方法である「InP-シリコン基板の作製とその基板上での結晶成長、プロセス」を用いて光通信用送信サブシステム構築を目指した研究である。この方法は、シリコン基板に膜厚1μm程度のInP薄膜を親水性直接貼付けし、このInP-シリコン基板に有機金属気相成長による化合物半導体の結晶成長を行い、デバイスプロセスを行うことによりハイブリッド集積を実現するものである。 令和3年度においては、シリコン基板上選択成長技術の基礎検討を行った。選択成長は半導体基板の一部をシリコン酸化膜で覆い、半導体が露出している部分に選択的に結晶成長を行う技術である。この際、酸化膜の幅および酸化膜に挟まれた導波路幅を制御することによって半導体結晶の成長速度を制御することができる。そして量子井戸構造を成長すれば、この酸化膜の幅によって量子井戸層厚が制御でき、バンドギャップ波長を変化することができる。InP-シリコン基板上において酸化膜形状(幅)と量子井戸構造の成長層厚およびバンドギャップ波長の関係を調査し、InP基板との比較検討を行った。そして選択成長に伴う成長層における歪量の推定を行った。 さらにシリコン基板上量子井戸レーザのさらなる低しきい値化を実現するために、歪量子井戸構造の最適化を行った。通常の成長において井戸層の歪量を制御した歪量子井戸レーザ構造をInP-シリコン基板上に成長し、レーザのしきい値電流密度の歪量依存性を検討した。しきい値電流密度が最低となる歪量がInP-シリコン基板とInP基板で異なる結果が得られ、シリコン基板上の結晶成長の最適条件の把握に前進があった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
InP-シリコン基板への有機金属気相成長法による選択成長を行い、InP基板との比較において歪量が基板によって異なることを確認し、マスク幅による歪量制御が可能であることを確認できた。今後研究において成長条件を把握できたことが成果である。 また通常の歪量子井戸レーザの成長において、歪量と半導体レーザのしきい値電流の関係を明確にする研究が進展している。シリコン基板上半導体レーザの作製における結晶成長条件として重要な研究である。 量子ドット構造の成長に関しては、InP-シリコン基板上におけるS-K成長による条件出しを行っている段階である。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画の通り、シリコン基板上多波長光源および量子ドット増幅器の試作を行う。シリコン基板上多波長レーザ光源の試作においては、酸化膜幅を場所的に変化したアレイ型マスク形状を作成し、発振波長が異なるアレイ型多波長レーザ光源の結晶成長を行う。そして分布帰還形(DFB)レーザを実現するために、それぞれのレーザ光源に合わせた回折格子を電子線露光によって作製する準備を行う。量子ドット増幅器に関しては、シリコン基板上S-K成長モードによる量子ドット構造の結晶成長技術をさらに進めて、光増幅器への応用を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
有機金属気相成長によるGaInAsP系半導体の結晶成長において、P(燐)の原料であるターシャリブチルホスフィン(TBP)の使用量が予想以上に多くなり、残量が無くなってしまった。レーザ構造の成長においてTBPは主要原料であり、これが無いと結晶成長はできない。そのため次年度予定のTBPの購入を前倒しして行った。次年度の結晶成長に必要な量も購入したので、計画通りの研究遂行に問題はない。
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