研究課題/領域番号 |
21K04203
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研究機関 | 大阪工業大学 |
研究代表者 |
前元 利彦 大阪工業大学, 工学部, 教授 (80280072)
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研究分担者 |
和田 英男 大阪工業大学, 公私立大学の部局等, 教授 (90846320)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | フレキシブルデバイス / フレキシブルダイオード / 酸化物半導体 / ワイドバンドギャップ / 酸化亜鉛 / エナジーハーベスティング / レクテナ / 整流特性 |
研究実績の概要 |
本研究は人体に安全な透明ワイドバンドギャップ酸化物半導体である酸化亜鉛(ZnO)に注目して、エナジーハーベスティングデバイスを実現するための薄膜成長技術ならびに加工技術の確立、フレキシブルダイオードを用いた整流回路の実現、RF-DC変換効率の評価と特性改善を行うことで、基礎科学分野の開拓と工学的応用を目指すものである。将来的には、電磁波を直流電流に整流変換するレクテナデバイスへ利用することで、無線LANのような微弱電波や微小マイクロ波エネルギーを高効率で電波から直流電流に常時変換できるエナジーハーベスティング回路への応用を目指す。 2022年度は酸化物薄膜となるZnOおよびAl添加ZnOの極薄プラスチック基板への形成とともに成膜条件の最適化を進め、特性の向上を図った。特に構造最適化およびオーミック電極形成のプロセス検討に注力し、コンタクト抵抗やシート抵抗などの電気特性を改善できることが分かった。レクテナデバイス開発に向け、酸化物積層構造の有用性についても新しい知見が得られており、2023年度にも引き続き実験を進めていく。また、アモルファス性の高いZnO薄膜を直接フレキシブル基板に形成することに成功し、ZnOが有機/無機ハイブリッドレクテナへ展開できることを明らかにした。酸化インジウムについても研究を進めており、150℃以下での形成が可能となっており、今後フレキシブルダイオードへ展開していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は酸化物薄膜となるZnOおよびAl添加ZnOの極薄プラスチック基板への形成とともに成膜条件の最適化を進め、特性の向上を図った。今年度は特に構造最適化およびオーミック電極形成のプロセス検討に注力した。オーミックについてはダイオード特性に直接影響を及ぼすため、フォトリソグラフィによる膜劣化の影響を受けないプロセスについて検討した。その結果、リソグラフィレスプロセスとともにZnO系薄膜の表面に酸化アルミニウム薄膜を積層することで、コンタクト抵抗およびシート抵抗が低減できるとともに擬2次元的な伝導層の存在が示唆された。今後はより平坦性を向上させ、高い電子移動度を持つ酸化物積層構造を検討する。 他方、以前はZnOをフレキシブル基板上に形成するためには酸化物バッファ層が必要であったが、薄膜の成長条件を検討し、アモルファス性の高いZnO薄膜を直接フレキシブル基板に形成することに成功した。また、凹凸方向に曲げても膜が破断することはなく、曲げ耐性を持つことが分かった。酸化物半導体フレキシブルダイオードの形成において有用な成果が得られ、今後、有機材料を形成されたフレキシブル基板にZnO系薄膜を形成し、有機/無機ハイブリッドなショットキーダイオードの試作を行う予定である。さらに水溶液を用いた低温化プロセスにより、150℃以下で高移動度な酸化インジウムの形成であることが分かり、今後異なる酸化物材料についてもレクテナデバイスの可能性について検討していく。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度の成果をもとに、2023年度はフレキシブル基板上に様々な金属/酸化物(ショットキー)接合ならびに有機/無機ショットキー接合を実現し、立ち上がり電圧の低電圧化や整流比の改善、優れたダイオード特性とともにAC-DC変換効率などの諸特性を評価する。また、周波数応答特性も評価してZnOを用いるフレキシブルダイオードを用いたレクテナ(Rectifying Antenna)デバイスの有用性を示したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度(2021年度)に金属用スパッタ装置の購入を計画していたが、研究の進捗状況を踏まえ一旦取りやめた。2年目(2022年度)についても、既存の大型設備で研究を進めることができていたため、消耗品のみの執行となった。昨年度後半より研究に進展があり、今年度は保有している装置に真空排気装置を購入することでさらに本研究課題を進展させることができると判断したため、排気ユニット(アジレント製)の購入を希望する。
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