研究実績の概要 |
本研究は人体に安全な透明ワイドバンドギャップ酸化物半導体である酸化亜鉛(ZnO)に注目して、エナジーハーベスティングデバイスを実現するための薄膜成長技術ならびに加工技術の確立、フレキシブルダイオードを用いた整流回路の実現、RF-DC変換効率の評価と特性改善を行うことで、基礎科学分野の開拓と工学的応用を目指すものである。 最終年度は、基板厚みの異なるフレキシブル基板上にZnO薄膜およびAZO薄膜を成長させ、10,000回までの繰り返し曲げ耐久試験を行い、表面観察と結晶性による構造解析および2端子抵抗による電気抵抗を測定し評価した。ZnO薄膜とAZO薄膜の抵抗値は、COP基板の厚さを50μmにすることで抵抗変化がほとんど無く、またGI-XRD測定から、基板厚さを薄くするにしたがい、ZnO薄膜とAZO薄膜の非晶質性を確認した。ナノインデンテーションの結果、COP基板や酸化シリコンバッファ層よりもZnO薄膜やAZO薄膜の方が弾性率や硬度が高く、酸化物薄膜を曲げた際の破壊メカニズムを電気特性および結晶性と関連付け、ZnO系材料が弾性率ならびに硬度が高く曲げ耐性のある材料であることを初めて明らかにした。また、酸化物積層構造の有効性を明らかにし、本研究成果により、酸化物半導体を用いたフレキシブルレクテナやフレキシブルエレクトロニクスに応用展開できる可能性も示唆された。 他方、酸化物半導体レクテナのフレキシブル化に向けて溶液法を用いた低温プロセスにも取り組み、短波長の深紫外エキシマ光を用いた酸化物薄膜トランジスタの新規プロセスについても実験を行った。エキシマアシストプロセスにより、200℃でガラス基板上に作製されたトップゲート型TFTにおいて、LTPS並みの低いオフリーク電流と6桁以上のOn/Off比、高い電界移動度をもつ酸化物TFTをガラス上に低温で作製可能であることを示した。
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