研究課題/領域番号 |
21K04206
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研究機関 | 呉工業高等専門学校 |
研究代表者 |
黒木 太司 呉工業高等専門学校, 電気情報工学分野, 教授 (30195581)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 防災減災 / アンテナ / IoT / センサネットワーク |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、土中に埋めたアンテナで電波時計運用に配信されている周波数40kHz・60kHzの標準電波や周波数500~1600kHzのAMラジオ放送波など、土中のような損失性媒質中を比較的深部まで伝搬できる長・中波帯電波を受信(ハーベスト)し、その受信情報から土壌の含水率を推定、含水率増加に伴う土砂崩れが予知可能なシステムを提供することにある。
2022度はまず含水土壌上における中波電波伝搬特性に関して理論的に解析し、自由空間から含水土壌を見た表面インピーダンスの解析結果より、中波電波伝搬損失は土壌含水量が多くなるほど減少することを明らかにし、これまで1年かけてAMラジオ波の受信電界、周囲温度、湿度、降雨量を30分ごとに計測し、「土壌含水率とラジオ波受信電界強度に強い相関がある」という実験的結果を理論的にも明らかにする。次に土中に埋めたコイルアンテナのQ値や非含水時のコイル自己共振周波数の設定手法を工夫することで、土壌含水量計測に適したコイルが設計できることを見出しす。またこのコイルと同等な動作をするダイキャスト加工作成超薄型平面コイルも設計試作し、本センサの低価格化に努める。さらに自己組織化マップによる脳型AIを用いた土壌含水率推定を念頭に、まずはこれまでのデータを精査し、統計的に土砂災害危険度を予知するアルゴリズムを構築、AMラジオ波受信電力から、その際の土壌含水率推定を可能とする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、土中に埋めたアンテナで電波時計運用に配信されている周波数40kHz・60kHzの標準電波や周波数500~1600kHzのAMラジオ放送波など、土中のような損失性媒質中を比較的深部まで伝搬できる長・中波帯電波を受信(ハーベスト)し、その受信情報から土壌の含水率を推定、含水率増加に伴う土砂崩れが予知可能なシステムを提供することにある。
2022度はまず含水土壌上における中波電波伝搬特性に関して理論的に解析し、自由空間から含水土壌を見た表面インピーダンスの解析結果より、中波電波伝搬損失は土壌含水量が多くなるほど減少することを明らかにし、これまで1年かけてAMラジオ波の受信電界、周囲温度、湿度、降雨量を30分ごとに計測し、「土壌含水率とラジオ波受信電界強度に強い相関がある」という実験的結果を理論的にも明らかにすることができた。次に土中に埋めたコイルアンテナのQ値や非含水時のコイル自己共振周波数の設定手法を工夫することで、土壌含水量計測に適したコイルが設計できることを見出し、実際にこの設計手法により作成したコイルを用いてAMラジオ波を観測することで、受信感度はさらに向上することを確認した。またこのコイルと同等な動作をするダイキャスト加工作成超薄型平面コイルも設計試作し、本センサの低価格化に努めた。さらに自己組織化マップによる脳型AIを用いた土壌含水率推定を念頭に、まずはこれまでのデータを精査し、統計的に土砂災害危険度を予知するアルゴリズムを構築、AMラジオ波受信電力から、その際の土壌含水率推定が可能になった。ただし推定のAI化に対してはデータ数がまだ十分ではなく、今後数年はさらなるデータ取得に努める必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
今後は以下の計画で本研究を推進する。
[1]ダイキャスト加工作成超薄型平面コイルの高感度化:従来のコイルアンテナセンサは量産化に課題があることから、2022年度はRFタグなどで利用される薄型コイルをダイキャストで作成し、これを自己共振させる形状で土壌含水量を推定したが、今後はそのい設計技術をさらに高精度化し、量産かつ安価なアンテナセンサの実現を目指す。[2]社会実装を念頭にしたセンサネットワークの構築:[1]で開発したアンテナセンサによるAMラジオ波の受信電力を高感度に計測するため、スペクトラムアナライザとマイコン、IoT端末を一体化したモジュールを作成し、これを呉市内急傾斜地崩壊危険指定区域に設置する。このシステム構築に関してはこれまで数回呉市産業部復興総室と打ち合わせを重ね、現在設置場所や電源供給方法など議論中である。[3]自己組織化マップによる土壌含水率推定:[2]で得られたデータをもとにリアルタイム計測される受信情報を自己組織化マップに入力、脳型AIにより土砂災害予知可能なアルゴリズムを開発する。具体的にはIoT端末で集約されたデータをクラウドコンピューティングする。また現状の土砂災害ハザードマップと連携させ、スマホで住民が危険状況を確認できるアプリを開発する。[4]長波を用いた深層崩壊推定:さらに深い位置での土壌含水量を推定するため、中波より波長の長い50kHzの長波を利用する。この場合パッシブ計測としては標準電波の活用が考えられるが、本研究では長波帯簡易ネットワークアナライザを利用し、アンテナセンサの反射係数を計測することで土壌含水量推定を試みる。すでに2022年度からその基礎実験を行っており、推定の可能性を検証できている。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の状況で、旅費を計上しなかったことが主な理由である。
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