硬化コンクリート中の連行空気の残存に関する研究を行い、セメント技術大会における口頭発表3件、土木学会全国大会における口頭発表2件、土木学会東北支部発表会での口頭発表2件、セメントコンクリート論文集における査読付き論文1件に投稿してそれぞれ発表した。セメント技術大会においては、優秀講演者表彰を受賞している。 以上の研究は3つに大別できる。1つ目は、連行空気の存在が各種コンクリートのスケーリング抵抗性に与える影響である。複数の実験結果から同程度の強度を有するコンクリートのスケーリング抵抗性は硬化後の微細空気の空気量との強い相関が確認され、特に150ミクロンメートル以下のコンクリート中の空気量を残存させることでその量と比例して向上することが分かった。 2つ目はスケーリング抵抗性に必要なコンクリート中の空気量の特定である。その結果、150μm以下の空気量を総計で3%程度確保することで0.5㎏/m2以下のスケーリング抵抗性を有するコンクリート構造物となることが分かった。 3つ目は施工にかかわる問題であり、バイブレータによる連行空気の移動を検討した。バイブレータは通常、現場では内部振動、工場製品では外部振動を適用する場合が多く、その併用もありうる。実験の結果、コンクリート中の連行空気は、大小の別にかかわらず、内部振動を与えると外側型枠方面へ、外部振動を与えると型枠側から内部方向へ移動することを実験的に明らかにした。締固めによって密実になったコンクリートから微細空気も排除されると結論付けられ、適度な振動締固めが必要となる。 コンクリート構造物の長寿命化が求められており、これまでに得られなかった知見をそれぞれに得ることができた。
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