今年度は,セメント種類は普通セメント(N),高炉セメントB種(BB),フライアッシュセメントB種(FB),高炉スラグ高含有セメント(ECM)を,表面含浸材には固化型のけい酸リチウム系(Li),反応型のけい酸ナトリウムとけい酸リチウムを混合したけい酸塩混合系(K)をそれぞれ選定し,小片モルタルを用いてスケーリング抵抗性を評価した。試験体の養生条件は,昨年度の実験結果から,Nを脱型1日,N以外の混合セメント系は脱型3日とし,いずれも含浸材塗布後に3日間の水中養生を与えた後,材齢28日まで20 ℃60 %RHの乾燥養生を行った。 その結果,含浸材無塗布の各種セメントのスケーリング抵抗性は,初期のスケーリングは圧縮強度が高いほど抑制され,その後のスケーリングの進行は,高炉セメントで抑制された。リチウム系(Li)の塗布によりN以外の3材料は,15サイクルまでの初期のスケーリング抵抗性が改善された。混合系(K)の塗布によりECM,BBは30サイクルまで,FBは15サイクルまでのスケーリング抵抗性が改善された。質量残存率が80 %でのスケーリング深さを算定すると1.2 mm-1.4 mm程度となり,含浸材の塗布により試験体のごく表層のスケーリング抵抗性が改善されるものと推察された。 以上,3年間の本研究を総括すると,シラン系の含浸材は塗膜の形成により水分逸散が抑制されるメカニズムであることから,塗布するセメントの種類に依存せず湿布養生と同等の強度発現性を示し,高いスケーリング抵抗性が認められた。けい酸塩系の含浸材は水酸化カルシウムと反応し,C-S-Hの生成が認められた。けい酸塩系含浸材の塗布による表面改質効果は,試験体のごく表層であり,セメント種類による顕著な差異は認められなかった。
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